──漫画、アニメ、舞台など、「サザエさん」の世界が愛され続ける理由は、なんでしょうか。

藤原:やはり人々の中に昔ならではの良さ、温かさに、どこか憧れがあるんじゃないでしょうか。原作でもアニメでも、必ず季節ごとに窓の外のお花や食卓の食事が変化します。日本の四季や食文化もきちんと描いていて。人の心もそう。家族だけではなく、隣近所、道ゆく人、皆に温かく優しく、おもてなしの心があり、時代が変化しても大切なものを自然に伝えてくれているから、いつまでも愛される作品なのだと感じています。

松平:舞台のお客様、漫画の読者の皆さんが、磯野家の誰かに、自分を重ねて見ることができるところじゃないですかね。それぞれの年代が、それぞれ同じ目線でものが見られるし、同じ感情を持てる。それと個々の人間性。サザエさんのおっちょこちょいだけど涙もろいところ、波平さんの頑固だけどやさしいところ……日本人の理想像ですよね。3世代が一緒に暮らせるというのも、今では珍しいんじゃないかな。僕自身、家族が多かったので、(1回目の)舞台でちゃぶ台を囲む場面、すごく懐かしかった。やっぱり、部屋の真ん中に円卓があって、兄弟でそれを囲んで、おかずをとりあったりしていました。

──藤原さんは、松平さんが波平さんと聞かれてどう思われましたか。

藤原:“あの健様がやってくださるの!”って、それはもうとにかくうれしくて飛び上がりました。先日も「魔界転生」でご一緒させていただきましたが、健さんといえば、国宝級の芝居、殺陣、存在感のお方。波平さんは「日本のお父さん」の代表です。それこそ全国民のお父さん。将軍から波平さんまでつとめられるその芝居の幅の広さと懐の深さに大変感動していますし、本当に幸せです!

──松平さんはサザエさんの藤原さんをどう思われますか。

松平:最初は、自分も紀香ちゃんも(体が)大きいから、(典型的日本人の)サザエさんや波平さんって、どうなんだろうって思っていたんです。でもやってみると紀香ちゃんのサザエさんは、おっちょこちょいぶりもちゃんと表現しながら、ほんわかしたところもあって、とても似合っていました。お母さん(フネ)役の高橋惠子さんも、身長が高いから、ご覧になっているお客様からしたら全員大きくてバランスがとれているんですよね。心配する必要はなかった(笑)。

次のページ