というのも、川島さんによると、大手不動産会社系列の管理会社の中にも、必要最低限の基準を満たす管理ができていないところがあるという。

「総会を毎年開き、議事録を残しているか、管理規約の原本を保存しているか、といった基本的なことさえなおざりのケースもあり、しかも、その状況が長く放置されている。国の新制度の認定基準に、『最低限』と思われるような項目が含まれているのは、こうした実態があるためでしょう」

 管理会社に管理が「丸投げ」されているマンションは少なくない。しかし、その会社がきちんと仕事をしてくれなければ、十分な管理など望みようもない。

 管理組合向けにコンサルティングするシーアイピー(同中央区)代表の須藤桂一さんは、「管理のレベルを高めるには、他人任せにしないことが重要」と言い切る。

「管理会社の担当者が、コストの面で100%、管理組合やマンションのためになることをすると思ってはいけません。管理会社に限らず、営業マンにとって、一番の上客は自分の言いなりになってくれる人。自社のサービスが別の会社より劣ると思っても、自社の売り上げや利益につながる提案をするはずです。管理を丸投げしていると、仮に損をしていても気づくことさえできない」

 須藤さんのもとには、過去にこんな相談が寄せられたことがある。

 管理会社が、管理組合がためてきた修繕積立金とほぼ同額の大規模修繕工事の見積もりを出してきた。見積もりどおりに工事をすると、組合の貯金がなくなってしまう。どうすればよいか……。

 須藤さんは言う。

「管理会社任せにしていれば、懐事情もすべて握られてしまう。とはいえ、今までの関係もあるでしょうから、その会社をいきなり切り捨てるのも現実的ではない。まずは、組合の理事会の議事録や議案書に目を通したり、理事を務めたりして、当事者意識を持つことが大切です」

 仕事や家事で忙しいからといって、目を背けてはいけないということだ。前出のさくら事務所がしている独自評価で、高い評価を得たマンションの一つが「プラウド葛西」(同江戸川区)だ。ここでは「自主性」を高めたことが管理状態の改善につながったようだ。

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