映画「愛のまなざしを」は、12日から渋谷・ユーロスペースほか全国公開 (c)Love Mooning Film Partners
映画「愛のまなざしを」は、12日から渋谷・ユーロスペースほか全国公開 (c)Love Mooning Film Partners

 ずっと映画に恋していた。経験を積むことで、自分が「いい」と思った作品に取り組めるようになった。そんな仲村トオルさんが、人間の性とエゴを炙り出した愛憎サスペンス「愛のまなざしを」に出演する。

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前編/仲村トオル「今からだって転職の可能性はゼロじゃないですよ。いや…」】より続く

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 最新の主演映画「愛のまなざしを」は、2001年に長編デビュー作「UNloved」がカンヌ国際映画祭でエキュメニック新人賞とレイル・ドール賞をW受賞した万田邦敏監督の作品である。今回は妻を亡くして思い詰めた人生を送る精神科医の役。一昨年の9月にクランクインし、今年の春に公開される予定だったが、コロナの影響で半年ほど公開は延びてしまった。

「公開が延びたおかげで、今日まで、取材を受けるために、映画をくり返し見直しましたが、そのたびに感じ方が違って、新鮮でした。1回目に感じたことを、『これはこういうことだったのか?』と思い直すというか……。見るたびに受け止め方が変わるんです。現場では、監督の言われたとおりに演じただけで、自分の考えをなるべく排除していたのですが、複雑で深遠で、情報量が多い作品になった気がします。役のことを理解して演じようとしないことで、思っていたよりも多くのことが醸し出されたというか」

 映画を撮っているときは、まさか公開時期に恐ろしい感染症が世界中に蔓延(まんえん)しているなど、想像していなかった。そして仲村さんは、舞台で、コロナの影響をもろに受ける。

「去年の、初めての緊急事態宣言のときは、あらゆる仕事がストップして、『お前たちのやってることは不要不急なんだよ』と世間から言われたような気分でした。でも、6月にドラマの現場に戻って、厳しいスケジュールの中でモノづくりをして、できあがったものを観たら、頑張ってよかったと思った。僕の場合は、9月に上演される舞台の稽古に7月末から入ったのですが、そのときは、稽古をやっていることが新型コロナという敵に見つからないように、草むらの中を匍匐(ほふく)前進で進んでいる感覚でした」

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