秋田に残る“呪術文化” 巨大わら人形には愛着がわく?

読書

2021/11/03 16:00

小松和彦=郷土史研究家。1976年、秋田市生まれ。青山学院大学で考古学を専攻。秋田県の花柳界や民間信仰を研究。宮原葉月=アートクリエイター。銀座ソニービルの壁画をはじめ、広告、挿絵などのイラストを担当。
小松和彦=郷土史研究家。1976年、秋田市生まれ。青山学院大学で考古学を専攻。秋田県の花柳界や民間信仰を研究。宮原葉月=アートクリエイター。銀座ソニービルの壁画をはじめ、広告、挿絵などのイラストを担当。

 集落の入り口に巨大なわら人形が立っている。また別の集落では、男女の木製の人形が鬼のような形相でにらみをきかせている。秋田県を中心とする東北内陸部には、こうした人形が祀られている地域がいくつかある。人形道祖神とも呼ばれ、疫病や魔物が入らないように村を守っているのだ。

「秋田でも知らない人が多いですね。国道沿いに高さ約4メートルのわら人形が立っているところもありますが、信仰の対象と知る人は少ない」

 と秋田市の郷土史研究家の小松和彦さん。やはり秋田市に住んでいたアートクリエイターの宮原葉月さんは、

「カシマサマとかショウキサマとか、神様の人形がかわいい。見れば見るほど愛着がわいてきます」

 2人は秋田人形道祖神プロジェクトを結成し、約4年間に県内120カ所以上を取材した。小松さんの文と宮原さんの絵による『村を守る不思議な神様 永久保存版』(KADOKAWA 1925円・税込み)には、その成果が詰まっている。角や性器があったり、キセルをくわえていたり、個性が爆発している人形たちの姿、集落の人々の思い、祭りの一部始終を楽しく読ませてくれる。

 わらや木で作られる人形は傷みやすいため、概ね毎年、作り替えの祭りが行われる。集落の人が集まって縄をない、むしろを編み、お面を塗り直したりして新しい人形を作る。神事の後、集落を練り歩いて村はずれに設置するのが一般的なパターンだ。宮原さんは、

「人形の顔が毎年ちょっと違っていたりして、ゆるさとアットホーム感がある。それでいてちゃんと信仰があるから、肝心な神事ではピシッとする。その塩梅がすばらしい」

 最初は県内のどこに人形道祖神があるかわからなくて、1カ所取材すると近隣の集落を探し回った。グーグルマップで祠(ほこら)を見つけて、「おたくの隣にわら人形はありませんか?」と隣家に電話して見つけたこともある。文献に載っていても行事が途絶えた村がある一方、江戸時代に秋田を旅した菅江真澄が描いた絵とそっくりな人形を今も祀っている集落もあった。

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