「冷や飯」すら与えられなかった竹中平蔵氏 (c)朝日新聞社
「冷や飯」すら与えられなかった竹中平蔵氏 (c)朝日新聞社

 菅政権では、閣僚と民間人の有識者が参加する「成長戦略会議」が経済政策の決定に強い影響力を持っていた。その中心となっていたのが、民間人有識者に名を連ねていたパソナグループの竹中平蔵会長や小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長らだ。

 だが、岸田氏は同会議を廃止。竹中氏に近い慶応大の岸博幸教授も、内閣官房参与を退任した。国土交通省関係者は言う。

「竹中氏は関西空港などの運営を手がけるオリックス社の社外取締役を務めていますが、同会議では、羽田・成田の両空港を統合し、所有権は国などに残したうえで長期間の運営権を民間に売却する『コンセッション方式』の導入を主張していました。その計画も、岸田政権の誕生で消える可能性が出てきました」

 利害関係者である竹中氏が同会議で空港政策について発言していることに、批判も出ていた。政府関係者は言う。

「羽田と成田の運営権を民間企業が受託すれば、巨額の利益が出ます。同会議では、空港という社会インフラをどう運営するかというのではなく、ビジネスとしていかに空港運営がもうかるかという議論が多かった。確実に利益の出る空港のコンセッションだけが狙われていました」

 与党内では、竹中氏が政権の中枢から去ったことを歓迎する声も多い。ある自民党中堅議員は「選挙を経た国会議員でもない民間人が、政策決定に持つ影響力が大きすぎた」と話す。

 ただ、このままで終わるとは限らない。

「規制改革は巨大なカネが動くビッグビジネスの側面もある。規制改革を求めて政治家に巨額の寄付をしている民間人もたくさんいる。今回、政権の中枢から外された規制改革推進派は、いずれ巻き返しを狙うだろう」(前出の政府関係者)

 こういった抵抗をはね返すには、政権の求心力を保つことが重要だ。それにはまずは選挙で勝つことが重要となる。政治ジャーナリストの田中良紹氏は言う。

「菅内閣が退陣したことで有権者の受け止め方が変わり、次の衆院選で与党が過半数割れする可能性はかなり低くなった。ただ、来年7月には参院選がある。それが本当の意味での決戦です」

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