(週刊朝日2021年10月15日号より)
(週刊朝日2021年10月15日号より)

 人生100年時代は、いつまでも健康に過ごしたい。厚生労働省がまとめた「健康寿命延伸プラン」では食環境が鍵とみている。特に日本人は減塩が大切だと指摘されている。そもそも日本人はどうして欧米諸国に比べて塩分を過剰に摂取しがちなのか。食欲の秋こそ、考えてみたい。

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「餃子は具の下味をしっかりとつけ、食べるときにはしょうゆを使わず、酢と胡椒につけて食べています」


 国民的な人気料理の焼き餃子を食べる際に、管理栄養士の緑川鮎香さんが勧める減塩法だ。しょうゆは塩分を多く含み、小さじ1杯で塩分量が約1グラムとされる。餃子の具には生姜を多めに入れ、風味づけに酒とごま油を加えているという。


 2019年の国民健康・栄養調査結果によると、食塩摂取量は1日平均で10.1グラム。1995年は13.2グラムあり、このところ減少傾向にあるが、欧米諸国などに比べて高い水準で世界保健機関(WHO)が推奨する1日5グラム未満の倍以上もある。


 厚労省のサイトによると、ナトリウムは人体に必要なミネラルの一種で、主に食塩の形で摂取される。細胞外液の浸透圧を調節し、細胞外液量を保つなどの役割がある。人が1日に必要とするナトリウムは600ミリグラムで、食塩相当量は1.5グラムぐらい。


「ナトリウムは食事の素材に入っており、普段の食事で1日に食塩相当量の1.5グラムぐらいとれるので、ナトリウムが不足することはありません」


 こう指摘するのは公衆栄養学が専門で福岡女子大学名誉教授、奈良女子大学特任教授の早渕仁美さん。1日の塩分摂取基準として「WHOは3グラムぐらいに抑えたいが、食生活を楽しむため、5グラムぐらいにしている」(早渕さん)という。


 野生の動物も塩分を必要としており、「1日に1~2グラムで生活している」というのは滋賀医科大学教授の三浦克之さん。日本高血圧学会の減塩・栄養委員会委員長の三浦さんは「アマゾンの先住民の摂取量は1~2グラムぐらい」と話す。人類は調味料などから大量に塩分をとっていると指摘する。塩分を過剰にとると、どうなるのか。

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