8月の大阪地裁判決は、中傷の書き込みを繰り返す個人ブログについて、プロバイダー事業者に情報の開示を命じた。ページに「小倉美咲ちゃん殺害・死体損壊事件に関するブログ」とサブタイトルがつけられ、小倉家の自宅の住所をさらし、「母屋の裏…死体の有無?」などと書かれていた。

 とも子さんの代理人、小沢一仁弁護士は「ブログはとも子さんが美咲ちゃんを殺害したとの事実を示すものと読むことができる。それがとも子さんの社会的な評価を低下させることは明らかで、名誉権を侵害している」と話す。今後は損害賠償請求と刑事告訴も検討しているという。

 現行のプロバイダー責任制限法では、誹謗中傷した相手を特定するには、SNSや掲示板の運営事業者と、通信の提供事業者それぞれに発信者情報の開示を求める必要がある。ひと続きで請求できるよう、同法の改正案が4月に成立した(施行時期は未定)ものの、小沢弁護士は言う。

「現行法はネット掲示板に対する書き込みを念頭に作られ、SNS時代に追い付いていません。なすべき手続きをしても、技術的に相手を特定できないこともあります。さらなる改正によって、技術的な理由による逃げ切りを許さない法整備が必要だと思います」

 社会的にはどう改善できるだろう。

「意見の相違に過ぎないのに、SNS上では会話相手の主張をデマだと決めつけて非難するなど、意図せず相手の権利を侵害するケースも散見されます。義務教育課程に『ネットリテラシー』を組み込むなど、より徹底した対応が必要です」(小沢弁護士)

 現行法の手続きについてとも子さんはこう話す。

「書き込む時間は1分程度でも、相手を特定して訴えるには1年はかかります。1年も経てば、当人はもう書き込んだことも忘れているかもしれず、強い矛盾を感じます。中傷を続ける人たちには、自分の言葉がどれだけ長い年月、相手に傷を与えるか、もう一度考えてほしい」

(本誌・松岡瑛理)

【これまでの経緯】

2019年9月21日、小学1年生だった小倉美咲ちゃん(当時7)はとも子さん、姉と3人で山梨県道志村にキャンプに出かけた。現地で、家族ぐるみの交流があった7家族で合流。午後3時半ごろ、おやつを食べ終えた子どもたちは遊びに出かけた。数分後にその後を追いかけた美咲ちゃんは、そのまま行方がわからなくなった。警察や消防、自衛隊も投入され大規模な捜索が行われたが、いまも見つかっていない。

週刊朝日  2021年10月15日号