報道陣に囲まれる河野太郎行革相(C)朝日新聞社
報道陣に囲まれる河野太郎行革相(C)朝日新聞社
古賀茂明氏
古賀茂明氏

 脱原発と再生可能エネルギー最優先の担い手河野太郎行政改革担当相と原子力ムラとの闘い(先週号参照)が、総裁選の重大テーマになってきた。しかも、この闘いは、自民党の派閥利権政治、とりわけ、「安倍政治」を葬り去る最終戦争になる可能性がある。何故か?

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 原子力ムラの大ボス安倍晋三前総理は、党内第一派閥・細田派の事実上のトップ。その盟友の麻生太郎副総理も原発推進派。麻生派の子分・河野氏の出馬阻止に躍起となっている。脱原発という政策論とともに、河野氏が総理になれば、世代交代が進み、80歳の麻生氏は過去の人になるという事情があるからだ。そこで、自分たちの言うことを聞く岸田文雄前政調会長を推すことになる。

 原発利権のもう一人の大ボスで麻生派重鎮の甘利明税調会長は72歳。安倍氏の最側近で、麻生派の後継者として総理を狙うつもりだった。収賄疑惑で致命傷を負ったが、今も復権のチャンスを狙う。「世代交代」など論外だ。読売新聞によれば、菅総理がワクチンの迷走で叩かれて辞めるのに、ワクチン担当相の河野氏の評価が上がるのはおかしいと、公然と派閥の仲間の河野氏を叩いている。

 一方、麻生、甘利と連携する安倍氏の動きは少し複雑だ。表面上は高市早苗前総務相支持だが、それは、彼女が政治思想も政策も安倍氏の分身と言っても良いほどで、選挙戦では、安倍氏の宣伝マシンとなるという利点があるからだ。しかし、高市氏支持は第1回投票までの話だ。

 安倍氏が怖れるのは、河野人気が沸騰し、河野氏がいきなり過半数を制して当選することだ。そこで高市氏を出して河野票を奪い、河野氏の過半数を阻止する。その場合は、国会議員と全国の都道府県連だけの決選投票になるが、1、2位が河野、岸田氏なら、細田(96名)、麻生(53名)、両派の大部分と岸田(46名)派が協力すれば、議員数では圧倒的に有利で岸田氏勝利となる。つまり、表の高市氏支持の裏で、自分の意のままに動く岸田氏を推しているのだ。岸田氏が森友学園問題について、再調査は考えていないと言い切り、安倍氏に媚びたことで、この構図が暴露された。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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河野氏と石破氏の連携なら総裁選に新たな意味が