林:ひろみさんのアンテナに、こういう人がちゃんと引っかかるというのがすごいですよ。

郷:それは僕の周りにいるスタッフの力も大きいし、それを信頼して、僕自身が「やってみよう」と思ったんですよ。

林:「100GO!回」は、ダンスナンバーですか。

郷:そうですね。僕が聴いても「えっ?」と思うところに昔のまんまの音が入ったりするんですよ。全部でいくつ入ってるか、僕もわかりませんが、イントロダクションは昔のナンバーのコラージュになっているので、この一曲で、僕が生きてきたことと、これからどんなふうに生きていくかが見えるんじゃないかなと思ってつくり上げたんです。「100GO!回」にしても「狐火」にしても、彼らはプロの人たちだなと思いますね。僕にはない才能です。

林:「100GO!回」も素敵だなと思うけど、「狐火」の素晴らしさにズシンと来ました。

郷:これ、バート・バカラックが去年発表した曲なんですよ。御年93のバート・バカラックの曲に、「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音さんが日本語の歌詞を担当してくれたんです。

林:川谷さんの作詞のセンス、素晴らしいです。「俺」という一人称の詞ですけど、ひろみさんが「俺」って歌うと、セクシーでドキッとしますよ。

郷:じつは「俺」って、禁句だったんですよ。僕、私生活で「俺」とは言わないし、たばこも吸わないから、「俺」も「たばこ」もダメだよと言ってるにもかかわらず、川谷さんは両方使ってきたんですよ。でも、歌詞を見て、これなら演じられるかな、と思って。

林:女の人に「俺のことどう思ってるんだ」とか言わないですか。

郷:ハハハハ、それはないです。周りも僕が「俺」って言うのは聞いたことないって言ってます。

林:怒ったときに「おまえ」とかも言わないですか。

郷:「きみは」って言いますね。だから説得力がないんですよ、僕が怒っても(笑)。怒ること自体もあんまりないんですけどね。

林:すごいですね。ところでひろみさんって、アップテンポの歌が代表作のように言われてるけど、私はバラードが素晴らしいなと思ってるんです。今回の「狐火」、ひろみさんの真骨頂という感じがしますよ。50年の節目に、大人じゃないと歌えないこんな素晴らしい歌を届けてくださって、ほんとにありがたいと思います。

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