黒川博行・作家 (c)朝日新聞社
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※写真はイメージです (GettyImages)
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 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、血圧について。

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 去年の秋ごろから血圧が上昇した。それまでは降圧剤を服用して、上が130、下が80くらいだったのが140・80ほどになり、十一月ごろには170・90にも上昇した。もちろん、かかりつけの医師にも相談したが、原因は分からない。そもそも本態性高血圧はなにに起因するのか分からないから“本態性”といい、それまで服(の)んでいた薬が突然効かなくなることもあるという。

 降圧剤二種──カルシウム拮抗薬とARBのうち、ARBを増量したが、効果はなく、年明けにも上が170、下が90になった。

 これはさすがに放置はできず、カルシウム拮抗薬を変えたが、やはり血圧はさがらない。朝方に測ると上が180を超えることもある。

 これではいけないと、総合病院へ行き、循環器の専門医に診てもらってカルシウム拮抗薬を増量し、朝と夕方に服むようにした。この半月、上が150台に降下してきたから、とりあえずはホッとしている。

 ──ちなみに、よめはんは料理に砂糖と食塩を使わない。塩味は醤油と味噌だけで摂っているから、外食をすると、どの店の料理も味付けが濃く、わたしにもよめはんにも塩辛く感じる。朝はふたりとも大皿いっぱいのサラダを食い、糖質はできるだけ控えて肥らないようにしている──。

 そんな状況下でよめはんとふたり、前述の総合病院へ行き、毎年恒例の人間ドックをした。まず身長、体重、腹囲を測り、血圧を測る。上が154で下が91だった。看護師が「高いですね」というから「これでも低いんです」といったら笑われた。所詮は他人事なのだ。

 採血、採尿、肺活量、聴力、視力、眼底検査、胸部レントゲン撮影、腹部エコーと進み、いよいよハイライトの胃内視鏡検査に向かう。よめはんとふたりだと、なぜかしらん心強い。

 検査室のベッドに横になり、血圧測定のベルトを巻かれた。モニターを見ると、上が90、下が47だった。「これ、なにかのまちがいやないんですか」訊くと、「横になっているからでしょう」と看護師がいう。

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黒川博行

黒川博行

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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