一方、崩落現場近くには、尾根の岩盤を切り拓いて平坦(へいたん)にし、大規模太陽光発電のためのソーラーパネルを敷き詰めた土地がある。これは現在の所有者が造成したものだ。今回崩壊した谷とその周辺一帯の土地は、現在の所有者が、盛り土工事をした時の元所有者から11年に購入した。
ソーラーパネル造成地が土石流の発生に影響したとの指摘もあるが、所有者の代理人の河合弘之弁護士はこう反論する。
「ソーラーパネルのある土地から流れる水は、崩壊した谷とは反対側に流れるようになっている。ソーラーパネルが原因になったというのは、根も葉もないデマだとはっきり言っておきたい」
前出の塩坂氏は、ソーラーパネル造成地と土石流発生との関係については、「直接的な関係はない」とした上で、こうした見方を示す。
「ただし、まったく影響がないわけではない。盛り土とソーラーパネル造成地は最も近いところで20~30メートルほどしか離れていません。ソーラーパネル造成地のほうが標高は高くて工事用の取り付け道路があるのですが、それがちょうど雨どいの役割をして、水が盛り土のほうへ流れ込むようになってしまっていた。その集水面積は軽視できません」
宅地などの造成でもソーラーパネルでも、山地での開発が進めば環境には何かしらの変化が現れる。今回、発生源を調査したNPO「地球守」の高田宏臣代表理事はこう話す。
「崩壊した谷の上部にも、残土によって造成したと思われる平坦な土地があります。その土を見ると、雨水が表土をえぐり、泥水を谷に流し込んでいました。また、谷部は盛り土によって水脈が止められ、土は粘土のように水を通さない泥になっていた。こうした泥が川底に堆積し、土石流が発生しやすい状況になったと思われます」
高田氏が続ける。
「熱海と同様の森林開発は、日本のいたるところで起きています。今の日本の土木工事は、地形を壊すことに無頓着になっています。今回の土石流は特別な出来事ではありません」
実は、過去にも“人為的”な要因による土石流が発生している。