私は、運とご縁で芸能界で仕事をしてきたので、実力が何も伴っていなかったんですよね。30代前半の頃には「私はこのまま芸能界からいなくなるんだろうな」と思っていたんです。しかも、「誰かに幸せにしてもらいたい」という気持ちが強くて、男性依存。それでは恋愛もうまくいくわけないですよね。

 そんな時に、まずは「自分で自分のことを幸せにしてあげよう」と考えることにしたんです。私は四姉妹の末っ子なんですけど、一度も褒められたことがないことがコンプレックスでした。そんな育て方にずっと反発していて、病気も親のせいにしたこともありました。そういう考え方を変えようと思ったんです。

 それから、フルーツなど食べられるものを少しずつ口に入れて、野菜や玄米を食べて体を健康にすると、心が前向きになっていくことがわかったんです。自分自身の体と心の声に敏感になった。自然療法でゆっくりと改善されていき、パニック障害を抑える薬も飲む必要がなくなってきて、30代半ばには全く症状が出なくなるまで克服できました。

──今回演じたナオミは臨月の妊婦ですが、親になったことで変わったことはありましたか?

 ナオミという女性は、腹をくくると強い。自分の経験も、そこにつながっているように思います。

 私も妊娠と出産を経てさらに変わったと思います。「もう自分のことはどうでもいいや」って。子供に使うエネルギーが大きすぎて、夜は子供と一緒に午後9時に寝てしまうし、自分のことなんてかまっていられない(笑)。誰かを守る立場になると、人間は最後まで希望をあきらめないんです。

──愛する人をどうやって守るのかというのは、本作のテーマの一つですよね。撮影は2019年1月で、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する1年前でした。作品は今のコロナ・パンデミックを予言したような内容にもなっています。

 こんなことが現実に起こるなんて本当に驚きました。撮影していた時は、世の中の人がみんなマスクをしているなんて思えなかったです。

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ウイルスを相手に、人間はどう戦っていくのか