なかでも印象的だったのは、ニュー・バージョンの「TOKIO」だ。原曲のポップさが取り払われて、コロナ禍で混乱が続く東京五輪・パラリンピックの開催を風刺するかのような鬱々としたアレンジ。歌唱からはさすがの“ロッケンローラー”ぶりが感じられた。

 ライブを観覧していた森本タローさんは、力あふれる沢田のパフォーマンスに舌を巻いた。

「あの年で、あのステージングができるのはすごいですよね。デビュー前から五十数年も彼を見続けてきてるけど、年を経るごとに歌もMCも数段うまくなって進化し続けているな、と感じます」

 インターネット上では緊急事態宣言下でのライブを危惧する声もあったが、森本さんとしては沢田の方針を応援したいという。

「いろんな意見があるだろうけど、1年以上もコロナ禍の自粛生活が続くなかで、ああやって大勢の人に元気を与えることができたというのは素晴らしいことだと思います。僕も久しぶりに大音量で音楽を聴けて、はつらつとしました。ファンのみなさんも、沢田の呼びかけ通りしっかり感染対策を守っていてすごいなと。いつもなら終わった後、タイガースのメンバーで食事に行くのですが、今回は僕たちも自粛して直帰しました」

 今後の活動についても期待を寄せた。

「沢田はまだまだいろんなことができるアーティスト。これからも僕たちを楽しませてほしい」

 同じくライブを見守った瞳みのるさんも、次のように語った。

「一言で言うと『圧巻』でした。ステージのブランクは1年4カ月あるのかもしれませんが、その間もずっと緊張感が続いていたんでしょう。そうでないと70代であんなシャウトやパフォーマンスはできません。コロナ禍を逆手にとって、しっかりトレーニングをしていたんじゃないでしょうか」

 現在の沢田についてたずねると、「1960年代から音楽シーンを切り開いてきたパイオニアです。タイガース解散後、いったんは袂を分かって僕は教育者の道に進んだけど、沢田の活躍については『やってるな!』とひそかにうれしく思っていた。ひいき目じゃなく、今の彼は日本のポップス界の頂点にいるアーティストだと思っています」と絶賛した。

 そのうえで「勉強家で、人におもねらず、自分の信じたことを貫き通す。そういう部分は10代の頃からちっとも変わっていません。僕が活動をするうえでもいいお手本、張り合いになっています。同じ思いを持つ同志として、また一緒にステージに立つ機会があればいいなと思います」と、心境を明かしてくれた。

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歌謡界の開拓者 スタンスは不変