林:なるほど。壇蜜さんは「サンデー・ジャポン」とかいろんな場面で社会的なコメントもされてますけど、あれも難しいですよね。うまく火の中に入らないようにしゃべらなきゃいけないから。

壇蜜:そうですね。「正しい」ことが一個じゃないことはわかるし、「正しくない」こともわかるけど、見てる人に何が「ああ、そうだね」って思ってもらえるか。それが昔は1個か2個だったと思うんですけど、今はもっといっぱいあるので、どういう考え方や言葉の選択をしていくのかは難しいと思います。

林:コロナになって、前よりもっとそういうことを考えるようになったんですか。

壇蜜:何かを考える時間は増えましたね。

林:つらいこともあった?

壇蜜:答えがない中で、みんなが怒ってるという現象に向き合うのは非常につらかったです。

林:みんなすごく怒ってますよね。私なんか「いいじゃん、そんなこと」って思っちゃうけど。

壇蜜:例えばジェンダー問題にしても「女は男の容姿を笑ってもいいけど、その逆はダメ」というステレオタイプが崩れていって、そうすると女の人が「なんでダメなんだ」って怒るし、男の人は「もとからダメに決まってるじゃないか」ってまた怒るし、ループですよね。平等に男女が傷つけない世界は、もう子どもが生まれないですよ。恋もできない。

林:この先どうなるんだろうって思う。このごろトイレにしても、今まで女性用と男性用ってマークが赤と青だったけど、それが男女を区別しないように、最近全部黒にしてるんですよ。女性用にスカートをはかせるのもいけないらしくて、まったく同じにしようとしてるように感じるんです。こんな不便を感じさせることが本当にジェンダーフリーなのかなって思う。なんで赤と青にしちゃいけないのかわからない。

壇蜜:アカレンジャーは男なのに、ほんとにおかしな話ですね(笑)。

林:男と女で色を別にしたって、そんなに怒ることじゃないんじゃないかなって思うんです。

壇蜜:そのうち「男」「女」っていう文字の表示もダメになっちゃうかもしれない。いつしか区別することが差別になっちゃって、「差別じゃない。区別なんだ」が通用しなくなる世界が、もうやってくる気がします。そして区別された人たちは、自分たちのアイデンティティーを保つために、またどんどん細かく区別していく。そのうちトイレのドアがいくつあっても足りなくなりますよ。

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