捜査関係者によると、一連の捜査の過程で、岡庭容疑者が殺傷事件前に現場周辺を撮影したり、事件について頻繁にネットで検索したりするなど、この現場に関心を持っていたことを示す情報を見つけたという。

 さらに、小林さんの次女にかけられた催涙スプレーと同じ成分を含むよけ用スプレーを岡庭容疑者が購入していたことや、現場に残された足跡と同じ種類の靴を事件前にインターネットで買った履歴があることも明らかになっていた。

 5月7日、茨城県警は、殺人容疑で岡庭容疑者の逮捕に踏み切った。

 今回も、4日後に公記号偽造事件の初公判が水戸地裁で開かれる見通しだった。

■なぜ被害者宅に 動機、移動手段は

 今後の捜査はどうなるのか──。

 逮捕にまではこぎ着けたが、決定的な証拠が見つかったという話は出ておらず、解明すべき点は多い。

(1)   岡庭容疑者が事件前に購入したとみられるスプレーや、小林さん方に残されていた足跡と同じ種類の靴は捜索では見つかっていない
(2)   事件当日に現場にいたことを直接裏付ける証拠も得ていないとみられる
(3)   県警は、岡庭容疑者と被害者との接点はなかったとみており、小林さん一家を襲ったとする動機がはっきりしていない
(4)   三郷市と現場とは約30キロの距離があり、一家の生活圏とも重ならない
(5)   岡庭容疑者はサイクリングが趣味で、県警は自転車で被害者宅を訪れたとみているが、なぜこの家を狙ったのか

 7日の逮捕から2週間以上が過ぎ、勾留期限の29日が迫る。子どもに対する傷害容疑もしくは殺人未遂容疑で再逮捕するのか。鑑定留置の可能性もある。

 県警は逮捕後の認否を明らかにしていないが、捜査関係者によると、岡庭容疑者は容疑を否認しているという。

 岡庭容疑者側の弁護方針は明らかになっていないが、捜査側と全面的に争う展開が予想される。別の捜査関係者は言う。「状況証拠を積み上げる捜査になる」

(朝日新聞取材班)

週刊朝日  2021年6月4日号