取材を進めると、もう一つの“欠陥”も浮かび上がってきた。インド以外の国からの入国者である。現在、入国時に6日間の待機が求められるのはインドや周辺の計6カ国だけ。インド株はすでに40カ国以上に広がっているにもかかわらずだ。17日にインドから帰国した日系企業で働く40代男性が言う。

「私が知る限り、インドからの帰国者は、位置情報確認アプリなどは空港で確実に導入しています。出国前72時間以内のPCR検査と入国後の検査、到着翌日から6日間のホテル待機を組み合わせた現在の対策は科学的に正しく、ほぼすべての感染者を検出できるはずです。水際対策を確実にするには、他国からの帰国者も隔離期間を延ばすべきではないでしょうか」

 日本ではインドからの帰国者を批判する声もある。この男性は「厳しいルールを守って帰国しているので、偏見はなくなってほしい」と話す。

 このことは19日の自民党外交部会でも問題になった。出席した自民党議員からは「タイやベトナムなど、最近になって感染拡大した国がある。そこからの帰国者のフォローができていない」と指摘があったという。

 そもそも、インドの感染拡大は3月に始まっていた。にもかかわらず、帰国者を宿泊待機の対象にしたのは4月28日。この時も初動の遅れが批判されたが、今でも対応は後手に回っている。

 本来なら、入国者全員をホテルなどで最低6日間隔離することが理想だ。だが、宿泊施設を増やせない事情もある。厚労省の担当者は言う。

「宿泊施設を増やすには、ホテルとの交渉のほかに周辺地域の住民の理解や施設内で働くスタッフの確保、検疫官の配置が必要です。また、待機日数を増やせば収容できる宿泊者の数が少なくなり、対応が難しい」

 今後、インド株が日本に広がれば、東京五輪・パラリンピックの開催も危うくなる。大会関係者は、こう話す。

「関係者の間で、『中止になった時はどうするか』というプランが検討され始めています。インド株が国内で広がれば、そんな話が表に出てくるかもしれない」

“ダダ漏れ”を早く修繕しなければ、取り返しのつかないことになる。(本誌・西岡千史、亀井洋志)

週刊朝日  2021年6月4日号