帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「退屈をどうするか」。

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【瞑想(めいそう)状態】ポイント
(1)退屈にうまく対応すれば養生を深める弾みになる
(2)心を瞑想状態にもっていくのにいいチャンス
(3)頭をぼんやりとさせながら思いを虚空に遊ばせる

「心のときめきこそが養生の基本である」というのが私の主張です。といっても毎日、心をときめかせるのも大変ですよね。ときには、生きているいまの時間に退屈を感じてしまうこともあって当然です。退屈とはナイス・エイジングのなかでエアポケットのようなもので、養生の流れを停滞させるものではありますが、これにうまく対応すれば、養生を深める弾みにもなります。

 生来せっかちなくせに、ぼんやりしていることも嫌いではなく、退屈で困るということはあまりありません。ところが先日は退屈を味わいました。

 ある学術集会でのことです。3人の演者が1時間ずつ講演するのですが、朝早くから始まったこともあって、聴いているうちに眠くなるのです。実は数年前の学術集会で最前列に座って聴いているときにも眠ってしまいました。それも熟睡です。ひじ掛けのない椅子だったので、右真横に倒れて、肩を床に打ちつけて、鎖骨を骨折してしまいました。今回は後ろのほうの席を選び、列の中程に座りました。これなら倒れても、目立たないし大丈夫です(笑)。で、案の定眠りました。最後は3人の演者の討論です。それまでに十分に寝てしまったので眠くはなりませんが、退屈なことは退屈です。もう街に出て、杯を傾けるのにいい時間になりましたが、終わりまで聴くのが礼儀だと自分に言い聞かせました。

 考えてみると、こういう退屈も体のためになっているのです。現代はストレス社会で自律神経のうち、交感神経ばかりが働いて副交感神経は置いておかれています。自律神経のバランスを回復するためには、ぼんやりリラックスして副交感神経を優位にすることが必要なのです。退屈を感じるときというのは、自分の心を瞑想状態にもっていくのにいいチャンスなのかもしれません。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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