帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける医療従事者(奥左)。手前は経過観察のため待機する人=2021年2月17日午前9時17分、東京都目黒区の国立病院機構東京医療センター、代表撮影 (c)朝日新聞社
新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける医療従事者(奥左)。手前は経過観察のため待機する人=2021年2月17日午前9時17分、東京都目黒区の国立病院機構東京医療センター、代表撮影 (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「コロナワクチン」。

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【恐怖心】ポイント
(1)コロナワクチンは伝統的なワクチンとは違っている
(2)ワクチンの本当の効果は、恐怖心を沈静化すること
(3)コロナが怖い人はワクチンを接種しよう

 欧米ではどんどん進められている新型コロナウイルスのワクチン接種が、日本でも開始。しかし、このワクチンを自らが接種するかどうかについては、人によって考えが分かれるようですね。

 そもそも、ワクチンとはどういうものなのでしょうか。ワクチンは接種することで、感染症の原因となる病原体への免疫力を獲得させるものです。1796年に英国の医師、エドワード・ジェンナーが天然痘に対する牛痘(ぎゅうとう)種痘法(種痘)を成功させて始まりました。

 それまでも2度は感染しないことが知られていましたから、天然痘患者の膿(うみ)を体に植え付けて故意に感染させるという乱暴な方法が行われていました。それによる死亡率は2%だったとも10%を超えたともいわれています。当時、欧州での天然痘の死者は毎年20万人から60万人だったといいますから、一か八かにかける選択肢もあったのでしょう。

 ジェンナーは、人には害のない牛の天然痘(牛痘)のウイルスを接種することを思いつきました。このように天然のワクチンが見つかることはまれで、幸運な発見だったといえます。その後、19世紀後半にフランスの細菌学者、ルイ・パスツールが病原体を弱毒化させてワクチンを作る方法を開発し、本格的にワクチンの時代が始まりました。

 さて、新型コロナウイルスのワクチンは、こうした伝統的なワクチンとは違っています。まずウイルスの遺伝子配列・構造を解明し、抗原を生み出すことのできる遺伝子(mRNA)を作ります。それを注射することで、体内でワクチンを作ってしまうのです。あるいは、人に対して弱毒性のウイルスに抗原になる遺伝子を組み込んで、それを運び屋(ベクター)として体内に投与します。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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