帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
五木寛之さん (c)朝日新聞社
五木寛之さん (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「他力と自力」。

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【ときめき】ポイント
(1)老いることで他力の世界が開けてくる
(2)しかし他力だけに流れてしまってはいけない
(3)最後は虚空で自力と他力が一体になる

「他力」と「自力」という言葉があります。本来は宗教に関連する用語なのでしょう。

 広辞苑にはこうあります。

<他力=他人の助力。仏・菩薩(ぼさつ)の加護の力を指す。浄土門において阿弥陀仏の本願の力をいう>

<自力=自分ひとりの力。独力。自分の力で修行して悟りを得ようとすること>

 これに伴って「他力宗」「自力宗」という言葉もあるのです。

<他力宗=他力によって極楽往生を求める宗門。浄土真宗・浄土宗など浄土門各宗派>
<自力宗=自力修行を旨とする宗派。天台宗・真言宗・禅宗の類>

『自力と他力』(ちくま文庫)という著書のある五木寛之さんと対談をしたときに、他力と自力、どちらが長生きできるのだろうかという話になりました。

 法然(浄土宗)=78歳没、親鸞(浄土真宗)=89歳没、蓮如(浄土真宗)=84歳没、道元(曹洞宗)=53歳没、栄西(臨済宗)=74歳没、空海(真言宗)=60歳没、最澄(天台宗)=54歳没

「おい、やっぱり他力のほうがいいな」

 と五木さん。確かに他力宗と自力宗では他力宗のほうが長生きです。でも、私が好きな臨済宗の中興の祖、白隠禅師は82歳まで存命でした。

 人間の一生を考えてみると、生まれた直後は誰もが他力です。赤ん坊はひとりの力では、生きることができません。子どものときも、親があってこそですよね。それから、自力の時代が始まります。成人して若くて力にあふれている頃は、何でも自分だけの力でできるのだと思い込みがちです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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