一人暮らしの場合は引っ越し代等の初期費用が低く見積もっても50万円程度は必要になる。

 私立大医学部を目指すには、さらなる経済力も必要だ。


「私立大は大学によって学費が2千万~5千万円程度と幅があります。志望校が決まっていない段階では必要金額がはっきりしませんが、相談に見える親御様には目安として3500万円用意するようにアドバイスしています」(同)

 医学部受験に向けて多くの受験生が予備校に通うが、私立大向けのほうが高額になるという。

「予備校の種類や受講コースによって変わりますが、概算で国公立志望なら年間100万~300万円、私立志望なら300万~800万円くらいの想定でしょう」(同)

 一般的に私立大学は学費が安いほど偏差値が高く、学費が高いほど偏差値は低くなっている。08年に順天堂大学が6年間で900万円と大幅な学費の値下げに踏み切り、志願者数が増えて難度も上昇した。順天堂大学に続いて東海大学、昭和大学、東邦大学、帝京大学、日本医科大学とほかの大学も次々と値下げをし、私立大学への学費の垣根が低くなったことでサラリーマン家庭でも地方の国立大学に進まず、地元の私立大学を志望する受験生が増えた。17年に開学した国際医療福祉大学は、6年間の学費を1850万円と最安値を設定している。メディカルラボの可児さんは、「後発の医学部ということで学費を下げ、優秀な学生を確保する狙いでしょう」と話す。

 しかし最近では20年に昭和大学が学費を500万円値上げし、さらに東京女子医科大学も21年に1200万円の値上げを予定している。

「学費の高い大学は敬遠されがちなので、間違いなく入試にも影響が出てくると思います。併願して複数合格すれば、受験生は学費の安い大学を選ぶ傾向があります。そうすると繰り上げ合格を出さざるを得ず、偏差値が下がる可能性もあります」(可児さん)

 最近では海外大学の医学部へ進学する生徒も増えている。学費や生活費を含めた費用は、日本の私大医学部と比較しても安い。ただし渡航費ほか別途費用がかかることも考え、余裕をもって見積もっておきたい。(ライター・柿崎明子)

週刊朝日  2021年2月26日号より抜粋