その後も、「最近、マッチ箱見ないね」だの「ハエ取り紙も見ないな」とか「好きな牛丼屋はどこですか?」やら「草野球ではショートを守ってます。『遊撃手』の『遊』ってのがいい」や「スーパーの袋が有料になってゴミを捨てるのに困ってる」などなど……ノンキなトークを続けさせて頂いた。「オトナ」の一人が業を煮やして「先生はコロナで生活に変化はありましたか?」と聞くと、間髪入れず「ありません」。

「『コボちゃん』に連載記録抜かれて悔しいですか?」と私が「煽り」気味の質問をすると「ぜーんぜん」と予想通りの答え。「ただお祝いのコメント求められてめんどくさい……出さないと悔しがってるみたいだから、しょうがないから出しました(苦笑)」。東海林さだお、可愛すぎる。そのあと二人で写真撮って、ちょっと目を離したすきに先生はお帰りになっていました。

 火の消えたマッチの残り香くらいの、煽ることも煽られることもない、そんな平熱なお爺さんになりたいね。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

週刊朝日  2021年2月12日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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