山尾志桜里衆院議員(左)、菅直人元首相 (c)朝日新聞社
山尾志桜里衆院議員(左)、菅直人元首相 (c)朝日新聞社

 衆院選全国289選挙区の当落を政治ジャーナリストの野上忠興氏と角谷浩一氏に予測してもらった。今回は関東について。

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 北関東で注目されるのは立憲の枝野幸男代表の地元・埼玉。前回は15選挙区のうち13選挙区を自民が制し、圧勝した。

「今回、自民は4選挙区を失う可能性があります。12区は前回492票差で自民が勝ったが、共産が候補者を下げたので逆転する可能性がある」(野上氏)

 角谷氏は自民が選挙区で3議席減と見るが、野党第1党代表の地元としては立憲の迫力不足。角谷氏がこう苦言を呈する。

「枝野氏のお膝元では他の立憲候補者がもっと有利になっていいはずですが、苦戦を強いられています。総理を狙うべき人物としての影響力が欲しいところ」

 千葉も前回13選挙区中12選挙区を自民が制した「自民王国」だが、1区や6区など立・共共闘でひっくり返りそうな選挙区が出てきた。失言問題で五輪担当相更迭の憂き目を見た自民・桜田義孝氏の8区は野党が乱立。かつて「小沢ガールズ」と呼ばれた太田和美氏がれいわから出馬する。

「太田氏は与野党両方から票を奪う可能性がある。共産が候補を下げれば、桜田氏が危うくなる展開もあり得ます」(野上氏)

 菅首相の地元・神奈川の注目は6区。遠山清彦氏が公明の比例九州ブロックから落下傘で送り込まれた。野上氏は「遠山氏苦戦」との予想だが、角谷氏はこう見る。

「公明のエースとして、支持層への浸透度は抜群です。しかし、与党批判票が立憲の青柳陽一郎氏に集中すれば互角の戦いになりそうです」

 公明の元幹部の一人もこう懸念する。

「遠山氏は保守志向なのか日本会議の会合にも出席する。前回の沖縄知事選では公明の九州・沖縄ブロックの最高責任者として玉城デニー氏批判の急先鋒だった。神奈川の学会婦人部は護憲・平和路線が強いから敬遠されるかも」

 首都・東京では複数の自民候補に「黄信号」が点灯。野上氏がこう語る。

「苦戦しそうなのが3区の石原宏高氏です。前回、4万5千票を取った共産が候補者を降ろすと、形勢は一気に逆転します」

 公職選挙法違反疑惑が報じられ経産相辞任に追い込まれた9区の菅原一秀氏も苦戦の見込みだ。

「地元でのイメージはそれほど悪化していないようだが、政治とカネの問題が注目されている今の情勢はマイナスに働く」(野上氏)

 かつて有権者に「うちわ」を配布したことが問題視された14区の松島みどり氏も苦戦。18区では菅直人元首相が自民に入党したかつての部下・長島昭久氏と戦うが、落選危機だという。

「菅氏は急遽引退を撤回して長島氏を迎え撃つが、今のところ長島氏に軍配が上がりそう」(角谷氏)

 国民の山尾志桜里氏は愛知7区から鞍替えして比例東京ブロック単独1位に指名されたが、それでも安泰ではないという。角谷氏が語る。

「衆院の比例東京ブロックの当選ラインは30万票と言われている。国民は19年参院選のとき、東京都内での比例得票数が約27万票。微妙です」

(本誌・亀井洋志、上田耕司/今西憲之)

週刊朝日  2021年2月5日号

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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