大統領就任式で演説するバイデン氏 (c)朝日新聞社
大統領就任式で演説するバイデン氏 (c)朝日新聞社

 バイデン新大統領を祝福するかのように、米国内外で株価上昇が続く。ニューヨーク株式市場のダウ工業株平均は、昨年11月の大統領選後に3万ドルの大台にのせ、年明け後も史上最高値を更新。この流れを受けて、年明けの日経平均株価は2万9千円に迫る場面もあった。日経平均は1990年以来の3万円台をいつ、突破するのか。

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「そう遠くない。早ければ1月末から2月の頭にも」

 カウントダウン間近(まぢか)とするのは、マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストだ。まもなく始まる企業の決算発表で、好調な中国経済を背景にして製造業を中心に上方修正が相次ぐとみる。上昇の流れが続いて「息の長い相場になる」。

 楽天証券経済研究所の香川睦チーフグローバルストラテジストも「3万円は今年の年末までにと思っていたが、前半、とくに4~6月に到達する可能性が出てきた」と話す。

 そもそも昨年11月からの株価上昇は、日米での大規模な金融緩和や財政出動に加え、バイデン氏の大統領選勝利で不透明感が消え、新型コロナウイルスのワクチン実用化への期待が重なったものだとされる。

 香川氏がとくに注目するのは、日本株市場を主導する外国人投資家から見た日本の株価。彼らはドル資金を円換算して売買している形だ。例えば、89年12月29日に日経平均が史上最高値となった3万8千円を、当時のレートでドル建てで見ると270.62ドルだった。これと同じように足元の日経平均をドル換算すると、275ドルほどとなり、最高値当時を上回っているという。まさに昨年11月から、外国人による日本株の買い戻しが起きているのだ。

 はたして死角はないのだろうか。三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、いまの相場展開について、ワクチンの普及やバイデン新大統領への期待を盛り込んだ「好材料の先食い」だと指摘する。それでも、いまの株価の上昇ペースが速いことから、「勢いしだいで3万円をつけてくるかも」(市川氏)と、早期到達の可能性を排除していない。

 もちろん、様々な期待が高まっているだけに、ワクチン接種の遅れや、その効果が期待外れに終わった場合、マイナス要因へとかわる。バイデン政権で増税がなされれば、株価にも影響を与えることになる。さらには、緊張関係にある米中の動向や、朝鮮半島情勢などが株価下落のリスクとしてくすぶり続けている。これらが一気に噴き出せば、「2万5千円を割る可能性もある」(香川氏)。

 桜の開花よりも前か後か? 市場関係者は注視している。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2021年2月5日号