だが、新体制が整う間もなく第3波が襲った。東京都の場合、12月中旬に1日あたり1千件前後だった相談件数が年末には2700件超に急増。状況が急変する中、現場ではトラブルが続いている。京都民主医療機関連合会(京都民医連)の松田貴弘事務局長が言う。

「11月末に発熱や嗅覚異常があった知人がセンターに電話すると、『府の医療機関紹介サイトで自分で調べて受診するか決めてください。しんどい場合は救急車を呼んで』と対応され、困っていた」

 京都民医連が11月から12月にかけて加盟病院の一つで発熱外来の予約者に「予約した経路」を尋ねたところ、医療機関の紹介が38%、かかりつけ医の紹介が36%、自力で探した人が20%で、センターや行政からの紹介は5%にとどまった。

「検査医療機関にたどり着けるのは、かかりつけ医から『あそこの病院ならPCR検査をやっているかも』と口コミを聞いたり、救急車で運ばれたりした人が大半。相談センターが機能していない」

 京都府健康対策課は本誌の取材にこう話した。

「11月の運用開始当初は体制が確立しておらず『府のサイトで探して』と伝えることがあったかもしれないが、今はない」

 京都府のセンターは庁舎内にあるが、電話の先が県外、という都道府県もある。石川県では12月、県議会の質疑でセンターの業務が東京都に本社を置く企業に委託されていると判明し、地元紙の1面で報道された。質問をした佐藤正幸県議が語る。

「民間委託したとは聞いていたが、センターは県内にあると思っていた。地域の医療体制の実情を踏まえているのか、一抹の不安があります」

 昨秋までの「帰国者・接触者相談センター」は県内の5保健所が運営しており、県民からすると「顔の見える相談体制」だったが、民間委託を機にがらりと変わった。

「地名が似ていても実際はひと山越える土地もある。家から遠い医療機関を紹介された人もいるようだ。県外の人に地域の細やかな事情がわかるのか」(石川県の関係者)

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