石原さんからも渡からも「芝居はするな。芝居がうまくなる必要はない」と言われました。確かに、僕らが頑張ったところで、本格的に演技を学んで、突き詰めてやってきたような人たちにはかないませんから。それは石原さんだって渡だってそうです。一方で、俳優というのはスクリーンに映し出されたファーストカットで「うわぁ、かっこいい!」と思わせる、圧倒的な存在感があれば、そのあとの2時間くらいは持つものだと僕は思うんです。「西部警察」だって、海をバックに石原さんと渡がトレンチコートを着て、たばこを吸いながら歩いてくるシーンがあれば、話はよくわからなかったとしても、いいものを見た気になってしまう(笑)。石原プロにいるということは、お前も存在感で納得させる俳優になれ、ということだったんじゃないでしょうか。だから渡が言った「お前には華がある」という、その言葉だけを頼りに今もある感じです。

――2020年8月に渡さんが亡くなり、石原プロの幕も下りる。

 やっぱり「きっちり閉める」ということは、残された我々の大切な仕事だと思っています。変な形でフェイドアウトしていくのではなくてね。

 でも、いまだに渡が亡くなった気がしないんですよ。お墓にも行ったんですけど……。亡くなる前、電話でよく話をしたんですが、必ず「ありがとうな。ありがとうな。俺みたいな者のことを気にかけてくれるのはお前ぐらいだよ」と言うんです。みんな、すごく気にかけていたのにね(笑)。渡らしいその言葉が、今も電話越しに聞ける気がするんです。

(聞き手・構成/大道絵里子)

週刊朝日  2021年1月1‐8日合併号