※写真はイメージです (GettyImages)
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 海外から突然、身に覚えのない電話。その多くが中国語で一方的に話すというもののようだ。そんな例が後を絶たない。

 実際に11月、記者(30代男性)の携帯電話にも女性の声で同様の着信があった。その際に電話の画面に表示されたのは「不明」の文字。異様に感じてすぐに電話を切ったが、いったい何なのか。

 詐欺や悪徳商法に詳しいジャーナリストの多田文明さんは指摘する。

「海外の詐欺集団が日本に住む中国人や、中国語の話せる人をターゲットにした『自動音声ガイダンス詐欺』です。『不明』のほかにも、国番号が表示された電話番号からのものもあります」

 次のような仕掛けだという。中国の警察や大使館を名乗る自動音声が、「在留資格などに関する大切なお知らせがある」と切り出し、「詳しく知りたい方は『1』を押してください」といった文言で番号を押すよう誘導。そのまま従うと、オペレーターと称した詐欺師につながる。いわゆる“振り込め詐欺”だ。

「こうした詐欺電話は数年前に、国内の詐欺集団によって日本でも多く起こりました。今回の特徴は、どこの国から電話がかかってきたかがわからないように番号を偽装していること。日本で流行した詐欺の海外バージョンです」(多田さん)

 日本をターゲットにするのは、中国で振り込め詐欺が流行していて、逆に海外ならば警察の目が届きにくいと考えているためだとみられる。

「世界各地で暮らす中国人に目を向け、アプローチし始めている。自動音声の電話がつながれば、その番号が使われていることがわかる。番号はデータベースなどに残されて、次なる手口の詐欺に使われたり、情報が闇の世界で売買されたりしているというわけです」

 中国人が標的とはいえ、穏やかではない。

「中国語による不審な電話は今年度に入って増え、ここ数カ月で急増しています。うちの職員にもかかってきました。電話に出るだけであれば、基本的に費用の請求などはないようですが、まずは発信者が不明な電話には出ないようにし、出ても不用意な番号操作はしないことです」

 国民生活センターの担当者はこう話し、実害の相談はほぼないとした。

 ただ今後は、ショートメッセージで日本語による詐欺メールが送られてくることも想定されるという。「日本語の音声ガイダンスがかかってくることもあり得ます」と前出の多田さん。あの手この手の詐欺にはくれぐれも注意したい。(本誌・秦正理)

週刊朝日  2020年12月4日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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