「特にコロナ禍の今は、夜に外出する機会が減った上、ソーシャルディスタンス(社会的距離)で人と距離も遠くなりがち。孤独感や疎外感を覚えやすく、SADが深刻化しやすいおそれがあります。気持ちが不安定になりやすい、思春期や出産前後、更年期、老年期といったライフステージにいる人は、気を付けたほうがいいでしょう」

 健康に欠かせない栄養素の一つ、ビタミンDの不足が、SADに関係しているという指摘もある。満尾クリニック(東京都渋谷区)院長で、『医者が教える「最高の栄養」』の著者の満尾正さんが説明する。

「ビタミンDは食べものだけでなく、皮膚に紫外線が当たることによっても産生されます。日照時間が短くなる時期は、皮膚で作られるビタミンDの量が減るため、血中濃度も低くなります」

 ビタミンDは神経伝達物質のセロトニンやドーパミンの分泌に関わっていたり、うつ病の発症に関係する腸内環境を整えたりする働きがあることがわかってきている。また、SADの患者を対象にした臨床研究では、ビタミンDを投与した群で改善効果があったことが明らかになっている。

「ビタミンDにはうつ予防効果だけでなく、免疫力アップ、認知症予防、がん予防など、さまざまな健康効果があります。新型コロナウイルスに関しては、ビタミンDの血中濃度が高いほどかかりにくく、かつ重症化しにくいという報告も出ています。しかし、日本人は足りていない。そこが大きな問題です」

 SADは季節性のものだが、しっかり対策を取って調子を整えていかなければ、本格的なうつ病に進んでしまうおそれも。認知行動療法研修開発センター理事長で精神科医の大野裕さんは、こう警鐘を鳴らす。

「つらい状態が続くと気持ちに余裕がなくなって人間関係がこじれるなど、別の問題を引き起こしてしまうこともあります」

 では、どんな対策を取ればよいのだろうか。

(1)体を動かす
「うつ病が長く続くときには、いろいろと頭のなかで思い悩んでいます。しかし、考えが堂々巡りして解決につながらないので、さらに自信を失うことに。このような考えすぎをやめることが大切になります」(大野さん)

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