コロナ禍で大学の指定校推薦の面接をオンラインで行う場合もある。

就職希望の生徒を学校に集め、企業の説明会を見せていたら、30秒ほどで切れてしまいました。そのことがあったため、大学から『高校で18時30分からオンライン面接をやってください』と言われたときにはお断りしました。ネット環境が整備されていないのに学校でやるのは無理です」(同)

 公立の小中学校、高校ではICT教育を活用できている学校はまだ少ない。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんによると、「6月の時点で東京23区のうち公立中学校でリモート授業ができていたのはわずか3区」だったという。

 だが、私立の中高一貫の進学校の約10人の教員に尋ねると、方法や時間などはさまざまだが、全校でICT教育を実施していた。そのなかで、特に感染対策に気を配っているのが、寮を持つ学校だ。中高一貫のラ・サール(鹿児島)は、1200人の生徒のうち約800人が県外出身者。

 4月4日に中学校と高校に分けて入学式を実施し、入寮式は放送で行った。始業式は8日の予定だったが、緊急事態宣言が出るとのことで、6日に、5月6日までの休校を決めたため、帰寮していない生徒が多かった。

 4月8日に、感染が拡大していた都市から寮に戻った高1生の感染が判明。翌日から新入生も休校になり、グーグル・クラスルームを活用したり、教材や課題を送ったりする形で在宅学習を始めた。

 高1生は個室なので、保健所の指導の下、十数人だけにPCR検査を行い、全員陰性だった。

「生徒の感染が判明した当初は、生徒や教職員の家族の通学、通勤の自粛を求められたケースもあり、子どもを幼稚園の入園式に出席させられなかった教員、図書館の利用を断られた生徒もいました。感染者が1人だけで、全員が陰性とわかってからもデマのたぐいが続き、事実に反して、当該生徒が退学したという誤った情報が流されました」と、谷口哲生副校長は当時の苦労を振り返る。

 同じく寮を持つ中高一貫校の北嶺(北海道)では、約300人の生徒が寮生活を送っている。3月6日に校舎から寮へつながる渡り廊下に、全国の学校で初めて、全身消毒液噴霧器を設置。校舎から寮に戻るときに、この機械で全身を消毒する。9月11日には通学生と教職員向けに校舎玄関に同じ機械を設置。

「11月になり、北海道は感染者が増加しています。終息が見通せないうえ、今後はインフルエンザも流行する時期を迎えます。これからも校内にウイルスを持ち込ませないよう消毒を徹底していきます」(谷地田穣校長)

(庄村敦子)

週刊朝日  2020年11月20日号より抜粋