北嶺中学・高校に設置された全身消毒液噴霧器
北嶺中学・高校に設置された全身消毒液噴霧器

「休校期間の授業の遅れを取り戻すために、夏休みは20日に減りました。さらに、6月から10月下旬まで週3日間、6時間授業が7時間授業に。週半ばで『まだ水曜日なのにしんどい』と、教員も生徒も疲弊しています」

 こう話すのは、西日本の市立中学校で数学を教える女性教員Aさん。下校時間を遅くしないため、授業時間を小学校は45分から40分に、中学校は50分から45分に短縮。「5分短縮で教えるうえ、1週間の授業数も21から24に増えました。授業の準備、課題作成、テストの採点などがあるため、コロナ禍の前は18時ごろに帰宅していたのが、現在は19時から20時の間。やる仕事は増えたのに、『勤務時間を減らせ。早く帰れ』と言われています」(Aさん)

 このため、自宅に仕事を持ち帰るか、朝早く登校しているが、早く行ってもタイムカードは通常の登校時間に押している。教育以外の雑務、部活動の顧問、保護者のクレーム対応などに加えて、新型コロナウイルスの感染対策、行事変更などの仕事も増えた。9月に通常の掃除に戻るまでは、教員が毎日消毒作業をしていたという。

 今後、さらに大変になりそうなのが、文部科学省が小中学生1人1台端末、高速通信環境を整備するGIGAスクール構想を打ち出したため、ICT(情報通信技術)活用教育が始まることだ。

「県教育委員会から『来年3月までに1人1台のタブレット配備』との指示がきました。機器のトラブルが起きたときの対応が不安ですね。教員の仕事はあまりにも大変なので、来年3月の定年退職後の再任用の希望は出していません」(同)

 大阪府立高校で英語を教え、進路指導も担当しているBさんも、ICT教育には苦労している。

「吉村(洋文)知事が全公立高校でオンライン授業を実現させるため、『6月末までにグーグル・クラスルームに全員ログインできるように』との号令をかけました。本校はネット環境が整っていないのに、急に言われ、簡単な説明があっただけなので、大変でした」

 その後、高3生に進路希望調査をするときに、グーグル・クラスルームを使ったという。

「選択肢を選んで送信するだけですが、うまくできない生徒もいて、紙の調査用紙を配りました。全員ができないと二度手間になり、紙のほうが早いです。府立高校のなかにはICT教育が進んでいる学校もありますが、まだレアです」(Bさん)

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