「そもそも菅氏は、維新の会の松井代表が大阪府議時代から親交があり、道州制の導入などでも意気投合していた。安倍政権時代も、安倍氏、菅氏、松井氏、橋下徹氏の4人で定期的に食事会を開くなど、ずっとつながっていましたからね」(前出の政界関係者)

 もちろん、菅氏が維新とのつながりを保つのには別の理由もある。前出の自民党幹部はこう語る。

「菅氏にとって、維新は重要なカード。安倍政権のようにいつまでも選挙で大勝できるわけがない。公明党だけではなく維新を加えた自・公・維連合の選択肢を持っておくことで、心もとない自身の権力基盤を強固にしておきたいという思いがある」

 いわば、維新は「第2の菅派」。大阪都構想で維新が勝利することは、菅氏の力を増強させることにつながるのだ。

 ただ、こうした流れが加速すれば、割を食うことになるのが二階氏だ。前出の自民党幹部が言う。「維新の力が増すと大阪だけでなく兵庫や京都に維新が多くの候補者を立てる動きが広まる。近畿地方で自民の議席が減るのは幹事長のメンツとして、影響力にかかわる。いずれ地元の和歌山も脅かされますし」

 ただ、今回、二階氏は沈黙を保ち、菅氏と事を構えることはなかった。

「二階さんにとって、菅内閣は自分が作った政権。今、維新をめぐって菅さんと対立しても意味がないからね」(二階氏側近)

 あたかも、大阪都構想が否決されて菅氏が「自滅」するのを待っているかのような態度。こんな情勢もあって、自民党内では微妙な空気が漂っていたという。

「本来は党をあげて(都構想に反対の)大阪府連に協力すべきだが、菅さんが維新びいきなのはみんな知っているから都構想には誰も関わりたくない。『触らぬ神に祟りなし』ということ」(前出の関西出身自民党議員)

 実際、世論調査で賛否が拮抗し続ける中でも大物議員が大阪入りすることもなく、自民党は終始「様子見ムード」だった。

 二階氏と菅氏の関係をさらに複雑にしているのが公明党の存在だ。

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「こんな時は学会員は動員されても応援演説に行かない」