落語家の私服はみんな似ている? 「一般人」一之輔の通勤風景 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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落語家の私服はみんな似ている? 「一般人」一之輔の通勤風景

連載「ああ、それ私よく知ってます。」

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春風亭一之輔週刊朝日#春風亭一之輔
春風亭一之輔・落語家

春風亭一之輔・落語家

イラスト/もりいくすお

イラスト/もりいくすお

 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「一般人」。

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 落語家は着物を脱ぐと『一般人』。

 和服を着て、座布団に座って、首を左右に振りながら独り言ちていたらかろうじて落語家と判別できるが、一度私服に着替えて街に出ると、一般人以上に『一般人』。「落語家専門の私服コーディネーター」がいるのか、と思うくらい皆おんなじような格好をして、ドトールでブレンドコーヒーを飲んでいる。ジャーマンドックを頬張りながら、日刊スポーツを読んでいる。お冷やを自分で注いで、テーブルが濡れるのが気になるので、紙のお手拭きをコースター代わりにコップの下に敷いている。スマホで電車の乗り換えを調べたり、なかにはいまだにガラケーでiモードを覗いている人もいる。レシートは必ずもらって確定申告にそなえる。

 電車に乗って空席を探すも見つからず、諦めてドア付近に寄りかかりひと息つく。中吊りをジッと見入る。石原さとみ結婚の記事にとりあえずガッカリしてみたり、「女性自身」の小室さんの記事を見て「いま日本に小室さんに興味のある人、何人くらいいるのだろう? 石原さとみのお相手が『一般人』なら小室さんも『一般人』ではないのかしらん」と思いを馳せてみたりする。駅に着き座席が空いたので、急いでお尻を割り込ませ、またひと息。膝に着物の入ったリュックを抱えるも、雨が降っていたので傘のやり場に往生し、膝と膝の間にピタリと挟んでみる。

 カバンから浅田飴クールの青い缶を取り出し、飴を舐めようとするのだが、たった一つ残った飴が穴からなかなか出てこない。無理に出そうとして缶を振ると飴がぶつかり、カチャカチャいって煩い。あまりに出ないので、仕方なくプラスチックの中蓋を外す。ようやく出てきた飴を口に放り込んだとたんに、膝に挟んでいた傘が正面に「パタン」と音を立てて倒れた。万事上手くいかないことに己の老いを感じる。


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