高齢ドライバーが自分の衰えを自覚し、緊張感を持って運転していれば、免許返納のタイミングも、本人が一番よくわかるはずだ。しかし、長年運転してきた自負が決断を鈍らせがちだ。

「家族が高齢ドライバーの運転を『危ない』と感じたら、本人に尊敬と感謝の念を示しつつ、時間をかけて高齢者の死亡事故率の高さなどのデータを見せながら、冷静に説得しましょう」

 同研究会では、運転継続判定アプリ「運転脳チェック11」を用意。各12秒以内に「曲がる時にウインカーを出し忘れることがある」など11項目に答え、「運転脳」を判定する。

 今年6月、75歳以上で一定の違反歴のある運転者に実技試験の「運転技能検査」を義務付けることや、自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置などの先進安全機能を備えた安全運転サポート車(サポカー)に限って運転できるサポカー限定免許の創設などを盛り込んだ改正道路交通法が成立した。また、2種類ある高齢者講習の一元化も予定されている。

 高齢ドライバー問題に詳しい山梨大学大学院総合研究部の伊藤安海教授は、同法改正に関して、「運転技能検査」はもっと若いうちから全免許保持者に導入すべきだと指摘する。

「悪い運転習慣は現役世代から形成されるため、遅くとも60代からは免許更新時に運転技能検査や運転指導を行うべきです。サポカーも高齢になってからではなく、まだ適応力が高い60代のころに買い替えをお勧めします。自分の能力の衰えは気づきにくいため、ドライブレコーダーの映像を子どもなどに確認してもらうのもいいでしょう」

(ライター・吉川明子)

週刊朝日  2020年10月30日号より抜粋