「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」のパンフレット(撮影・高橋奈緒)
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」のパンフレット(撮影・高橋奈緒)

  10月16日に封切られた映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が驚異的な数字をたたき出している。公開第1週の週末3日間の興収が、46億2000万円!!公開10日目には107億円を突破し、100億円に到達する日数が日本で上映された作品のなかで最速となった。

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 これがどんなにすごいことなのか。映画興行に詳しい関係者が呆れ顔で説明する。

「気持ちが悪い、怖いとまで感じるほどの前代未聞の数字。最終的に興収250億を超えた『君の名は。』(2016年)の4倍、鳴り物入りの前宣伝で始まった『アナと雪の女王2』(19年)の2.5倍にあたるスタートです。あまりにすごい数字なので、いったいどこまで伸びるのかという期待と、どこかで失速するのではという不安の両方を感じます」

 原作は、16年2月から今年5月まで「週刊少年ジャンプ」に連載された吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)作のマンガ「鬼滅の刃」。大正時代、鬼に家族を殺されたうえ、妹を鬼にされてしまった主人公・竈門炭治郎が、鬼殺隊に入り、妹を人間に戻すために鬼と戦う物語だ。

 17年に「少年ジャンプ」誌上で初めて作品を読み、一気に心を鷲づかみにされたというコラムニストの堀井憲一郎さんが語る。

「切ないんです。人の生死を扱うんですが、その人生についてきちんと描いているから、生き死にがとても切なく感じます。読み始めたのが、ちょうど主要キャラのひとりが死ぬ頃。彼の死のシーンでぐぐっと心をつかまれました。読んでて泣いてしまうんです。泣くのがわかっているから、駅の売店で買ってはいかん、電車の中で読んではダメだと思うんですが、すこしでも早く読みたくて、つい電車で読んでしまって……」

 しかし、堀井さんが読み出した当時は、さほどすごい人気があったわけではないという。

「僕は大学のマンガ研究会と交流があって、20人くらいの学生相手に『鬼滅の刃』って泣けるよねと話したんです。でも反応したのは1人だけ。その子とはものすごく話が弾み、熱く語り合ったんですが、他の連中はそもそも作品をよく知らないようで、反応が悪かった」

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マン研学生の反応が一変。その理由は?