5月の日本ダービーを3馬身差で制したコントレイル(左)。右は2着のサリオス(C)朝日新聞社
5月の日本ダービーを3馬身差で制したコントレイル(左)。右は2着のサリオス(C)朝日新聞社
歴代三冠馬の表
歴代三冠馬の表

 競馬界にとって歴史的な年になるかもしれない。10月18日の秋華賞でデアリングタクトが勝ち、無敗で牝馬三冠を達成。もし10月25日の菊花賞(京都競馬場)でコントレイルが勝てば、史上初めて牝馬・牡馬両方で無敗の三冠馬が誕生することになる。

【一覧表】歴代の三冠馬

 皐月賞、日本ダービーの二冠を制して挑むコントレイルは、史上8頭目の三冠馬になるか? その強さについて、競馬評論家の井崎脩五郎さんが語る。 

「コントレイルは三冠確実だと思います。ダービーは(ペースが)超スローで普通なら接戦になるはずなのに、馬群から3馬身も突き抜けたあたり、この世代はこの馬だけが突出していると思います」

 競馬実況歴30年を誇る矢野吉彦アナウンサーも、

「三冠馬が出る年というのは、皐月賞の感じで何となくわかるんですよ。たとえばシンボリルドルフにはビゼンニシキというライバルがいましたが、皐月賞が終わってからはルドルフの独壇場になりました。今年もそんな雰囲気です」

 コントレイルにもサリオスというライバルがいて、2強と言われていた。しかし初対決の皐月賞で半馬身差で勝利を収めたコントレイルは、ダービーでその差を3馬身に広げた。サリオスは路線を変更し、菊花賞には出走しない。

 中山競馬場での2000メートル、東京競馬場での2400メートル、京都競馬場での3000メートルと、まったく異なる条件の3レースを制する馬は特別な存在であり、その偉業を目撃すればずっと記憶に残る。

 井崎さんに思い出の三冠馬を尋ねると。

「ミスターシービーは忘れられないですね。母親のシービークインが繁殖入りしたとき、この馬の初子が三冠を取るような大物になると競馬雑誌で予想をして、その通りになりました。ミスターシービーの三冠の単勝馬券は換金せずに残しておいて、手綱を取った吉永正人騎手にまとめてサインをいただきました。家宝です」

 同じくミスターシービーが忘れられないと語るのは、競馬パーソナリティーの鈴木淑子さん。

「初めて競馬中継の仕事をさせていただいたのが、1983年の弥生賞。そのときに勝ったミスターシービーがあまりにもカッコよくて、ずっと応援しようと思いました。私にとって初恋の馬です。その馬が19年ぶりの三冠馬に輝いたのですから、幸せ者ですよね。最初にめぐりあったのがミスターシービーでなければ、今日まで競馬の仕事を続けていなかったかもしれません。脚質が追い込みですから、いつもドキドキ。菊花賞のときは最後方から早めに上がっていって、第3コーナーでは先頭に立つ勢い。ハラハラしました」

次のページ
岡部幸雄と武豊へと受け継がれた「指3本」の意味