平井卓也デジタル相 (c)朝日新聞社
平井卓也デジタル相 (c)朝日新聞社
「デジタル庁」の創設で業績が上がる会社20 (週刊朝日2020年10月23日号より)
「デジタル庁」の創設で業績が上がる会社20 (週刊朝日2020年10月23日号より)

 菅首相の目玉政策として掲げられたデジタル庁構想。どういった企業が業績が上がるのか。自社開発のAIで経済や企業の将来を予測するベンチャー、ゼノデータ・ラボ(以下、ゼノ社)の協力で、その影響を調べた。

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 ランキングを見ると、上位には遠隔医療関係の企業が目立つ。河野太郎行政改革相が「オンライン診療を初診も含め原則解禁する」と発表し、市場拡大が期待される。

 第1位のイメージワン(新井智社長)は医療機関にクラウド型の電子カルテや、遠隔で画像診断するためのシステム導入の支援をしている。

 遠隔医療のニーズの背景には医師の不足や偏在がある。地域によっては幅広く診療する医者や専門医がいない。しかし、遠隔医療によってスマホで診察ができたり、町の診療所と大病院をネットでつなぎ専門医から診察を受けることも可能になる。

 また、クラウド型の電子カルテのニーズも高まる。多くの病院では自らデータ管理をしているが、クラウド化によって管理費が抑えられるという。

「将来的に遠隔医療を海外に輸出する展開も考えている」(新井社長)

 ランキングにはクレジットカード会社も目立つ。遠隔医療やオンラインショッピングなどが進むことでカード決済が増えるとみられる。最も順位の高かったクレディセゾンの広報担当者は言う。

「スマホを使ったサービスにも力を入れ、顧客接点は拡大している。弊社の強みはノンバンク系で小売、交通、銀行など多様な企業と提携している点。全国に拠点があり、幅広い世代に利用されている」

 上位にはデジタル化の支援や関連機器を扱う企業も多い。

 官公庁のデジタル化も大きく進むとみられる分野だ。17位に入った、企業や官公庁向けにITサービスを提供するチェンジの福留大士社長は「これからは聖域なきデジタル化が進む」とみる。

 これまで中央官庁をはじめ地方自治体でも、住民サービスにかかわる業務のデジタル化には二の足を踏んできた。しかし、現場では人員削減により、人手不足が深刻化。仕事を効率化するニーズが高まっている。

 同社の稼ぎ頭は連結子会社トラストバンクだ。ウェブ上で住民からの申請を受け付ける「LoGoフォーム」や、紙を使わずに組織内で情報共有する「LoGoチャット」の導入を全国で進めている。大幅な業務削減に成功しており、それぞれ100以上、500以上の自治体が利用を開始している。

「トラストバンクはふるさと納税を紹介するサイト『ふるさとチョイス』を運営しており、自治体とつながりが強い。菅首相は言い訳を許さない雰囲気があるので、一気にデジタル化が進むのでは。今後は情報共有の紙や決裁のハンコもなくなっていくでしょう」(福留社長)

(本誌・池田正史、吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年10月23日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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