中野:そうですね、おそらくは……。自分を差し置いて女が論文を書くのも許せないという人もいました。一度そういう人とつき合って、もう懲りました(笑)。論文を書くのも邪魔するの。

林:あ、中野さん結婚指輪してる。結婚して何年ですか。

中野:10年ですね。

林:どうやって選んだんですか。東大クンはイヤだし、頭のいい人は見飽きてるわけでしょう?

中野:まず、一緒にいて楽だという人を見つけるのが大変でしたよ。私がやってることに眉をひそめない男性だということも。夫は実に摩訶不思議な人物で、論理的でもないし絶妙にズレていたりするのですが、ここぞというポイントでは、人を混乱させながらも、どこか考えさせられる本質的なことを突くという。

林:ご主人は東大じゃなくて、芸術系の大学だったんですよね。今度ぜひ東大クンの本を書いてほしいな。私たち、東大クンの生態を知らないから。

中野:すっごい悪口に見えるかも知れませんよ? 愛すべき人たちですが、私が見てきた東大クンは人格破綻者ばっかりだから(笑)。

林:すごく知りたい! 東大クンの生態。『走れ! 東大クン』ってどうですか(笑)。絶対売れそうな気がする。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力:一木俊雄)

中野信子(なかの・のぶこ)/1975年生まれ。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年までフランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。現在、東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授として教鞭を執るほか、脳科学、認知科学の最先端の研究業績を一般向けにわかりやすく紹介することで定評がある。著書多数。近著に『空気を読む脳』(講談社+α新書)、『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『パンデミックの文明論』(文春新書、共著)などがある。

週刊朝日  2020年10月16日号より抜粋