心の病によって母親が子どもを病気に仕立てる不幸な事例を防ぐには、どうしたらいいのだろうか。



『赤ちゃんが大人になる道筋と育て直し―三つ子の魂、乳幼児体験の大切さ―』の著者で臨床心理士の角田春高さんは、こうした母親の内面を探り、理解することの重要性を語る。

「母親は、孤独感と孤立感にさいなまれているがゆえに、子どもを陰で痛めつけてその子どもを世話する良き母親として関心を寄せてもらい、同情を集めているのだと思います。私が相談を受ける時には、母親が頼りにしている人を核に据えて、その人が母親の内面に耳を傾け、理解してあげるように努めてもらいます。自分は一人ではない、真剣に考えてくれる人が身近にいるのだと安心できる経験が必要です」

 2010年には、入院していた幼い3人の娘の点滴に水などを混入して、1人を死亡、2人を重症にさせたとして「代理ミュンヒハウゼン症候群」と診断された母親が傷害致死の罪に問われ、懲役10年が言い渡される事件があった。

 保護者による子どもの虐待で「代理ミュンヒハウゼン症候群」が疑われる事例があるときは、最悪の事態を招く前に専門家の診断を受けて、精神的なケアが求められる。

(本誌・岩下明日香)

*週刊朝日オンライン限定記事