そのちょっとしたおせっかいとは、たとえば「他孫(たまご)育て」だ。

 自らの孫を育てる手伝いをするように、学童保育にかかわったりするなどして他人の孫を育てるお手伝いをする。

「若い人だって順風満帆の時ばかりじゃありません。そういう場面で、すっと手を差し伸べることができるのが林住期の人の役回りです。ただ、このおせっかいは、やりすぎると嫌われます。おせっかいが通じなかったら押し付けずに、すっと退くことが大切です。ソーシャルディスタンスではありませんが、適切な距離感を保ちましょう」

『老活のすすめ』には、健康・長寿を保つ生活習慣や、暮らしを支えるお金のことなど、実践的なアドバイスが書かれている。

 そのひとつに「オペアガール」の試みがある。これは欧米の制度で、外国からの留学生がホストファミリーの家に住み、家事や、子供や高齢者の世話をする代わりに、部屋を提供してもらうシステムのことだ。

 日本でも子供が家を出て空いた部屋ができたならば、そこに学生を間借りさせることを提案している。

「部屋を提供する側は、離れて暮らす家族に代わって入居者の若者に見守りをしてもらったらどうかと思うのです。お返しに自分の知っている生活の知恵などを若い世代に伝えることもできる。世代を超えた交流にはもってこいだと思うんです。うちの学生のためにもやってほしい」

 老後に孤立するのではなく、いろいろな世代とゆるやかに助け合う、ソーシャルディスタンスを保ちながら老活ライフを過ごす。

「私もZoom飲み会をやってみたんです。参加した人たちはみなコロナで会食、宴会、オフィスでの長時間滞在をやめて、家にいる時間と読書、勉強の時間が増えたというのを聞いて、いい方向に進んでいる部分もあるんだなと感じました」

 坂東さんの老活ライフはウィズコロナ時代との相性も悪くないようだ。

「広い世界とゆるやかにつながる老活は、いわゆる人生のベターライフに通じます。ウィズコロナ時代の、ニュー“ベター”ノーマルにしていきたいですね」

(本誌・鈴木裕也)

坂東眞理子(ばんどう・まりこ)/1946年、富山県生まれ。東京大学卒業後、総理府入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長などを経て、98年に女性初の総領事(オーストラリア・ブリスベン)。2004年に昭和女子大学教授となり、07年学長に。現在は同大学理事長・総長。最新刊『老活のすすめ』(飛鳥新社)など著書多数

週刊朝日  2020年9月25日号