老婆心ながら気になっているのは、相手によっては「だ!」は失礼に当たらないか?ということ。目上の人には「倍返しです!」とか「倍返しさせて頂いてもよろしいですか!?」とか「倍返しさせて頂くことになりますが、その折は必ず前もって連絡させて頂きます!」とか臨機応変なのが出来る大人というものだよ、直樹。

 ところで「倍返しだ!」って、直樹はどのタイミングで言ってるの? 戦いにいく直前、切り火をしてくれる上戸彩に対して自宅玄関で「これから倍返しだ! 行ってくる!」ってかんじ? それとも相手と直面し、必殺技を繰り出すその直前に「倍返しだ! これでもくらえーっ!」的な? はたまた「倍返し」し終わった後、うずくまって苦しんでいる敵に向かって「どうだ? 倍返しだ! まいったかっ!?」とダメ押し風に? 1時間で何回くらい言うんだろう? そんなに興味があるなら観ればいいのだけど、また「あつ森」のローンが貯まってしまった。聞けば半沢直樹って銀行員らしい。ちょっと相談にのってもらおうかな。悪徳業者のたぬき開発に「倍返し」だ!

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

週刊朝日  2020年8月14日‐21日合併号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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