「私は緊張しやすいタイプで、子どものころから完璧主義者なところがあります。『ちゃんとやらなきゃ』という思いが強く、発表会などでは心臓がバクバクしていました。それでもなぜか演技というものが、やればやるほど楽しかったんです」

 しかし子役時代から、仕事の厳しさは感じていた。

「いまでも覚えているのですが、初めての撮影のとき、監督の話が理解できず、どうお芝居したらよいかまったくわからなくて、何回も撮り直しをしてしまったんです。みんなの表情がどんどん暗くなっていくのがわかりました。そのとき撮影スタッフが『どこでこんなヘタクソな子を見つけてきたんだ!』と言ったんです。これにはショックを受けました。『ああ、やっぱり私はダメなんだ!』と」

 なんとか撮影を終え、家に帰って母に「私は才能がない」と泣きついた。

「でも母が『そんな人の言葉は聞かなくていい。これからよくなるから自信を持って!』と言ってくれました。この世界は甘くないとわかったけれど、でも演じることは大好きだった。がんばってやり続けたいと、人生で初めて覚悟を持ちました。その覚悟こそが『演じる』ことではないか、といまも思っています」

 出演作は好評で、オファーは途切れることがなかった。学校に通いながら「ファン・ジニ」(2006年)やペ・ヨンジュン主演の「太王四神記」(07年)などに出演。誰もが知る子役スターとなったが、天狗(てんぐ)になるようなことはなかった、と笑う。

「中学に入学した最初のころ、先輩たちが教室に『シム・ウンギョンってどの子?』と見に来たことはありましたけど(笑)、でも私は本当に普通の子だったんです。周りはみんなK-POPアイドルに夢中で、でも私は子役でしたし、そんなに派手な立場になかった。なにより私の両親は特別扱いのようなことを許しませんでした。撮影現場でも常に礼儀正しくしなさい、と厳しく教わりましたし、学生としての時間を大切に過ごしてほしい、とずっと言われてきました」

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