明治大・大六野耕作学長 (撮影/写真部・加藤夏子)
明治大・大六野耕作学長 (撮影/写真部・加藤夏子)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国の大学が学びの機会をどう確保するかとともに、新しい教育のあり方を模索している。明治大学の大六野耕作学長がコロナ禍で苦しむ学生に伝えたいことを語った。

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 学生たちに直接会えたら言いたいことは、このピンチを機に、自分の将来やりたいことを考えてほしい、ということです。

 対面授業もできない、サークルもバイトもできない。留学もできなくなった。新入生は一度もキャンパスに来ていない。「なんでこんな目に」と思う学生も多いでしょう。

「学費を返してほしい」という声も大学に届いています。大学HPなどを通じて発信する情報を補う意味で、私は自ら一つひとつ丁寧に返事を出しています。

 自分が何をやりたいのか突き詰めて考える機会はこれまで少なかったと思います。将来、いや応なく自分でコントロールできない状況に置かれることが出てくるはず。そのとき、自分でやることを考え、行動した経験が役に立つはずです。

 社会全体が今までどおりには動かず、社会を頼ることができないときに頼れるのは自分だけです。自分が何をしたいかわかれば、耐えられる。教育の根本にあるのは、この意欲なんです。この本質はコロナ禍でも変わりません。

 大学はこの意欲を持つ学生に学びの選択肢を与える場です。本学では新型コロナで家計が急変した学生に10万円を支給し、パソコンなども無償で貸与しました。ファンドも作り、中長期的な支援体制も整えました。オンラインで海外大学と交換留学する制度も始める準備が進んでいます。学生たちの意識をできるだけ将来に向けようと取り組んでいます。

 私は大学に入学した年の10月から半年間、学生運動で授業が休講になりました。翌年は再開しましたが、休み癖がついて授業に行ったのは20日ぐらい。「これではいけない」と思って、アメリカのカリフォルニア大(UC)バークリー校エクステンションに留学しました。

 向こうの学生にはショックを受けました。ジャーナリストになりたいとか、みんな大学で学ぶ明確な目的を持っているんです。それで私はアメリカ史を学び始め、今の研究分野である政治学に入っていきました。

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