「映画館というのは、どーんとヒットしたときの収入で賄っているから、満席にできない現状では稼ぎきれないという怖さがある」と説明するのは、1982年開館の老舗、ユーロスペース(東京都渋谷区)の北條誠人支配人(58)だ。

 ユーロスペースは6月1日に再開したが、特に高齢者層が戻ってきていないという。同じ6月1日から上映を再開しているシアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)の山下宏洋支配人(47)も、まだ通常の状態には遠く及ばないと指摘する。

「やはり年配の方が少ないかなという印象です。館内は安全だと言っても、ここに来るまでに電車に乗るなど、心理的に越えないといけないハードルがいくつかありますからね」

 すでに継続を断念したミニシアターもあり、4月に沖縄県石垣市のゆいロードシアターが長期休館となったほか、山形県鶴岡市の鶴岡まちなかキネマは再開することなく閉館。6月23日には、東京都杉並区のユジク阿佐ケ谷が8月での休館を発表した。

 鶴岡まちなかキネマは2010年、中心市街地の活性化事業として工場跡地を再利用して開館。わずか10年の営業だったが、「年間13万人の動員を見込んでいたのに、多い年でも8万人弱と、以前から採算ベースにいかなかった。コロナの感染者が早い段階で鶴岡市に出たりして、出歩く人も急に少なくなったし、やむを得ない部分がある。自粛中の閉館で、ラスト上映ができなかったのが心残りです」と企画制作室長の遠藤洋幸さんは残念がる。

 そんなミニシアターの危機を救おうと、映画関係者を中心に多くの人が立ち上がった。

 4月6日には、諏訪敦彦監督、白石和彌監督といった映画監督や俳優らが呼びかけ人となって、#SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」プロジェクトが発足。政府の緊急支援を求める要望書を作成し、賛同者の署名を募った。4月15日には集まった署名を携えて内閣府や文化庁などに要望書を提出。署名は9万筆を超えている。

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