同行したユーロスペースの北條支配人はこう話す。

「舞台や音楽の人たちと一緒にやることで、さまざまな戦術を学んだ。コロナが収束したら終わりではなく、ここから先の映画文化のあり方について考える機会になったんじゃないか」

 このプロジェクトはその後、ライブハウスや小劇場の支援活動と共同で国に働きかけ、国会での首相答弁を引き出すまでに至った。

 金銭的に援助しようという動きも活発化した。中でも深田晃司、濱口竜介の両監督が発起人となって始めたミニシアター・エイド基金は、インターネットを利用した寄付システム、クラウドファンディングで広く支援を募り、各ミニシアターに配分しようというもので、4月13日にスタート。目標金額の1億円はわずか3日で突破し、5月15日の終了時には3億3100万円を超えた。

「1カ月じっくりかけて1億円を超えようと思っていたので、まずびっくりしましたね」と発起人の一人、深田晃司監督(40)は驚きを隠さない。

「もともと日本は寄付文化が薄い国だし、インターネットを使うことで、ミニシアターを支えるメインのファン層である高齢者の方々には大変かと思っていた。コロナ禍で映画館に行けなくなるという状況が生まれ、どれだけミニシアターがその人の人生にとって大切な存在かということに気づいたのではないでしょうか」

 基金に参加した劇場は118館。すでに5月末に100万円ずつが振り込まれ、合わせて1館あたり250万~300万円が贈られることになる。

週刊朝日  2020年7月17日号より抜粋