同社社長で医師でもある石見陽氏はオンライン診療について、「実際に今までの対面の診療に置き換わるものではない」としつつも、次のような利点を挙げる。

「このコロナ禍の状況では、『熱が出たけど、どうしよう』と不安に思っても、なかなか医療機関を受診できませんが、オンラインなら、家にいながら診てもらうことができます。医療機関にとっても、発熱患者さんがいきなりクリニックに入ってくるというリスクを避けられます」

 これまでも精神科の領域では、病気で外に出られない患者に対して、オンラインも含めた遠隔診療が行われてきた。他人がいるとなかなか話せない患者でも、オンラインだと普段の生活の様子がわかるという。

 海外では、家庭血圧計や体内の酸素濃度を測るパルスオキシメーターなどの家庭用の検査機器と連動し、医師が数値を確認しながら行うオンライン診療も始まっている。

 一方で、石見氏は、特例とはいえ、初診までオンライン診療ができるようになったことには慎重だ。

「率直に言って、怖いですよね。アンケートでも慎重な意見がいくつか出ていましたが、まったくそのとおりで、情報量が少ないので医師としては不安です」

 初診まで実施するかどうかは別にしても、アンケートのなかには「これを機に通院困難な人には(オンライン診療を)継続してほしい」(三重・30代・循環器内科)など普及、定着を望む声も多い。

「そのためには、新型コロナの流行が落ち着いた段階で、オンライン診療のあり方を一度、見直す必要があるでしょう。問題点を洗い出した上で、どんな病気ならば診療が可能なのか、オンラインではできない触診などを補う新しい問診方法はどういう形なのか──などを考えていくことが大事だと思います」

 そういった点を踏まえ、石見氏は、在宅医療とオンライン診療との連携や、健康相談などの医療関連分野にもオンラインが広がっていくことを期待する。

「今までの診療にオンラインが加わることで、クリニックのなかだけで終わっていた医師と患者さんとの関係から、健康不安について気軽に相談できるファミリードクターのような存在により近づくと思います」

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