オンライン診療で病院やクリニックに行くことは避けられても、処方された薬を受け取るためには、調剤薬局に行かなければならない。当然ながら、調剤が終わるまでは薬局で待つ必要がある。

 そこにコロナ感染の不安を覚える人もいるかもしれないが、そんな心配を払拭(ふっしょく)する措置がとられているのをご存じだろうか。

「調剤薬局で処方薬をもらう際、薬剤師から薬の性質や飲み方、副作用などについて説明を受けます。これを服薬指導といい、薬剤師に義務付けられているものですが、コロナの流行下において調剤薬局でも暫定的に電話やオンラインでできるようになったのです」

 こう話すのは、メドピア社の後藤直樹氏。昨年6月にかかりつけ薬局化を支援するアプリ「kakari」を立ち上げた。

 患者は薬局から紹介されたアプリをダウンロードし、指定の薬局を登録する。処方箋を受け取ったら写真に撮って薬局に送る。調剤が終わると薬局からアプリにお知らせが届く。薬局では薬を受け取るだけなので、平均20分といわれる待ち時間も減らせる。

 ほかにも、処方された薬の相談など、調剤後のサポートが受けられるチャット機能や、電子お薬手帳機能も。kakariを使っているある薬局は最近、関節リウマチで強い痛み止めを飲んでいる患者から「頭痛薬を買って飲んでいいか」という問い合わせを受けたという。新型コロナにまつわる相談も少なくないそうだ。

 後藤氏によると、5月以降、薬局からの問い合わせが相次ぎ、資料請求も約3倍に。アプリのダウンロード数も大幅増だという。

 背景にあるのは、医療機関への受診控えによる処方箋の激減だ。医療機関と同様に、患者が減ったことで、経営的に窮地に追い込まれている調剤薬局もある。

「多くの薬局が、患者さんと継続的な接点を持てるサービスに興味を持ち始めているのだと思います。今は暫定措置ですが、改正医薬品医療機器法(薬機法)が施行される9月からは、オンライン服薬指導が正式に解禁となり、副作用や服薬状況を薬剤師が定期的に確認する服薬フォローの義務化も始まります。これを機に薬局を取り巻く環境も大きく変わるのではないでしょうか」

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2020年7月10日号