「今年は、例年なら花見で書き入れどきであるはずの3月に、宿泊や会食のキャンセルが相次ぎ、売り上げは例年に比べ9割減りました。一方で、人件費や光熱費などの支出は毎月4500万円ほどあります。当館には森鴎外が『舞姫』を執筆した旧邸が残っていますが、このまま先の見えない状況が続けば、いずれ守っていくことができなくなると思い、余裕のあるうちに閉館することにしたのです」

 政府は5月14日、特定警戒の8都道府県以外の39県を、21日には大阪、兵庫、京都の3府県をそれぞれ緊急事態宣言の対象から外した。残る東京、神奈川、埼玉、千葉、北海道も25日に解除され、47都道府県すべてで「自粛モード」が解かれた。

 しかし経済への影響は、これから深刻になりそうだ。東京商工リサーチ情報部長の原田三寛さんは、倒産ペースが上がると予想する。

「今までに倒産した企業は、昨年10月の消費増税の影響などを受けて、もともと経営の厳しかったところが少なくありません。必ずしも、コロナばかりが原因ではない。しかし、これからは借り入れや財産を切り売りすることで負債が膨らんだり資本が傷んだりした『バランスシート劣化型』の倒産が中心になっていく。例えば、中小企業には内部留保が厚いところはあまりなく、経営環境の変化への対応が難しい会社もあります。業種も、消費や観光関連から、自動車産業の3次、4次下請けなどに広がっていく可能性がある」

 東京商工リサーチの集計では、2月こそ2件だったが3月23件、4月84件と月を追うごとに増えている。5月は22日時点で63件にのぼり、3ケタ台になりそうな勢いだ。

 エコノミストで経済評論家の斎藤満さんも、「時間が経つほど資金繰りに行き詰まる会社は増える」と懸念する。

「財務省の法人企業統計によると、現預金や株式、債券など企業の手元資金を、毎月の売り上げで割った『手元流動性比率』の平均は1.9カ月(金融・保険業を除く)。手持ちのお金が年商に対して約2カ月分しかないという意味。わかりやすく言えば、何の問題のない会社でも、2カ月間売り上げがない状況が続くと干上がってしまう。緊急事態宣言後、2~3カ月経った夏ごろに破たんが本格化する可能性があります」

次のページ