※写真はイメージです。記事本文とは関係ありません(getty images)
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 安倍晋三首相は14日、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を39県で解除することを明らかにした。一方、厚生労働省の調査によると、新型コロナの感染者で自宅療養している人の数は今月7日時点で957人。同日の回復者を除く感染者数は6697人なので、全体の1割以上が自宅で過ごしていることになる。感染者が自宅で過ごすことは、家庭内感染につながる危険性がある。

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 そこで本誌は、新型コロナに感染した息子を自宅で看病した女性を取材。そこから見えたことは、自宅療養する人の看病で感染におびえる日々、差別や偏見を恐れて社会から孤立し、にもかかわらず行政や医療機関の支援がほとんどない日本の新型コロナ対策の現実だった。

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 千葉県に住む谷本緑さん(仮名)の暮らしが一変したのは、3月下旬のある日だった。

 この日、新型コロナの感染拡大前から海外に渡航していた息子が、日本に帰国することになった。ところが、息子は日本行きの飛行機に乗る前日に発熱。一時的に熱が下がったので飛行機に乗ったが、成田空港に到着した時には体調が再び悪化し、立っているのもやっとの状態だった。この時から苦悩の日々が始まった。谷本さんは、こう話す。

「熱が出ていたことは、息子は成田空港の検疫で伝えたんです。なのに、検疫では診察や検査を受けるようにという指示もなく、そのまま日本に入国が認められました。それで、自宅に帰ってから夜に救急車で病院に行くことになりました」

 3月29日には、お笑いタレントの志村けんさんが新型コロナに感染したことが原因で死去。この頃から日本国内では感染拡大に警戒が強まっていた。谷本さんは医師にPCR検査を依頼したが、当時の基準では、PCR検査は37.5度以上の熱が4日以上続かないと検査してもらえない。医師からは「ただの風邪かもしれないので、熱が続くようならもう一回来て下さい」と言われ、断られた。

 だが、自宅に戻ってからも熱は下がらず、4日経ってから再度病院を訪問。その時にようやくPCR検査を受けることができた。結果は陽性。これで治療が受けられると思ったが、そこで言われたのは「病床に空きがない」という、まさかの言葉だった。それで自宅療養せざるをえなくなった。自宅では、息子は高熱だけではなく、息苦しさ、鼻づまりなど新型コロナに感染者がかかる特有の症状に苦しんだ。

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公的機関からはマスクや消毒液の提供すらない