検察庁法改正案を所管するのは立場でありながら、答弁に立たず、「森隠し」と野党から言われている森法相(C)朝日新聞社
検察庁法改正案を所管するのは立場でありながら、答弁に立たず、「森隠し」と野党から言われている森法相(C)朝日新聞社
次の総長候補とされる東京高検の黒川弘務検事長(右)と名古屋高検の林真琴検事長(左)(C)朝日新聞社
次の総長候補とされる東京高検の黒川弘務検事長(右)と名古屋高検の林真琴検事長(左)(C)朝日新聞社

 検察庁幹部の定年を政権が延長できるようにする検察庁法改正案に対する、<#検察庁法改正案に抗議します>というTwitterに大きな賛同が集まる中、衆議院内閣委員会で13日、集中質疑が行われた。野党側が撤回を求めたが、与党側は今週中に採決したい考えを変えていない。

【写真】次の検事総長とされるのは、黒川検事長とこの人

 発端は5月8日夜に発信された<1人でTwitterデモ #検察庁法改正案に抗議します>という30代女性のつぶやきだった。

 それ以降、政治的発言はご法度とされる芸能界からも井浦新や浅野忠信、秋元才加、小泉今日子ら賛同のツィートが続々あった。

 演出家の宮本亞門も<コロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。民主主義とはかけ離れた法案を強引に決めることは、日本にとって悲劇です>と主張している。

 ここまで抗議が盛り上がっている背景には今年1月、東京高検の黒川弘務検事長が定年退職する直前に突如、閣議決定で半年間の延長となったことがある。

 黒川検事長はこれまで、安倍晋三首相の森友学園・加計学園疑惑など、政権中枢に疑惑が浮上するたびに“官邸の守護神”として、コトを治めてきたとされる人物だ。その”実績”があるだけにこのコロナ禍の中、改正法案の成立を急ぐ、安倍政権に不信感を抱く声が強まっている。

 野党は検察庁法改正について内閣委員会で答弁に立った武田良太・国家公務員制度担当相を追及。黒川氏の定年延長と法改正の関連性について質問が及ぶと、「黒川氏のための法改正ではない」と否定しつつも、「まぁ、本来ならば法務省からお答えすべきことであると思います」などと答弁に窮した。

 本来、検察庁法改正案を所管するのは森雅子法相だが、これまで国会で黒川氏の定年延長などの答弁で迷走を繰り返し、炎上。

 安倍政権はこの改正案を国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法改正案と一本化して提出するという荒業で、委員会を国家公務員法を所管する内閣委員会にしたため、武田担当相が答弁することになった。そのため、「森隠し」と野党は批判を強めている。国民民主党幹事長の原口一博衆院議員はこう指摘する。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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黒川検事長の定年は68歳まで延長?