ベトナムにある「アベノマスク」生産工場内部の様子(樋山社長提供)
ベトナムにある「アベノマスク」生産工場内部の様子(樋山社長提供)
ユースビオの樋山茂社長(本人提供)
ユースビオの樋山茂社長(本人提供)
ベトナムにある「アベノマスク」生産工場内部の様子(樋山社長提供)
ベトナムにある「アベノマスク」生産工場内部の様子(樋山社長提供)

 不良品問題などのドタバタが続く「アベノマスク」問題で、政府が4月27日になってようやく会社名を公表した納入業者が福島県福島市のユースビオ。同社をめぐってはネット上の一部から「実態のないペーパーカンパニーではないか」などと疑惑の目が向けられている。そこで本誌は今回、同社の樋山茂社長にベトナムでのマスク生産から輸入までの詳細を尋ねた。初めて当事者の口から明かされる「アベノマスク」生産現場の姿とは──。

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 樋山社長によれば、ユースビオは2017年に設立され、ベトナムから再生可能エネルギーの燃料として使われる木質ペレットを輸入し、それを日本国内や韓国、台湾などへ売りさばくビジネスを営んでいた。樋山社長は自らを「ブローカーのプロ」と語る。ちなみにユースビオは「use bio」、有益なバイオマス、といった意味合いをイメージして命名したという。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、以前から付き合いのあったベトナムの業者から4トントラック1台分ものサージカルマスクが送られてきた。これを各方面に寄付したことなどがきっかけとなり、経産省や厚労省などでつくる政府のマスク対策チームに布マスクを納入することになった、と樋山社長は説明する。

 納入した布マスクは350万枚で、単価は1枚130円台。妊婦や介護施設向けに配布された。実際に生産したのはベトナムの業者で、樋山氏は原料の供給、型紙の作成、素材の選定、工程や品質の管理、成田までの通関手続きから輸送手段の確保までを担当したという。

「今回はうちでお金を出して生地を買って工場に供給して作らせている。ブローカーとしてはやりすぎだが、日本人なんでやるしかない、という気持ちだった。130円台は儲けを考えたら安いけれど、なんでも請け負った以上はプロだから、ちゃんとしたものをつくらないといけないと思ったんです」(樋山社長)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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担当者はベトナムの工場に段ボールを敷いて睡眠