税制面の優遇措置もある。

「中小事業者限定で、固定資産税を半分またはゼロにする特例措置が盛り込まれています。2~10月のうち、3カ月間の売上高の減少幅が前年の同時期に比べて30%以上50%未満なら半分に、50%以上ならゼロになる。23区の固定資産税の税率は1.4%で統一されているので、年間20万~30万円の固定資産税を払っている事業者もザラなことを考えれば、この特例措置のメリットは大きい」(FPの井戸美枝さん)

 既存の助成金制度を活用すれば、新型コロナ禍で発生した従業員の休業手当の大半を補填することも可能だ。通常、事業縮小により社員を休ませた場合には、会社が支払う休業手当の3分の2(中小企業の場合)を助成する雇用調整助成金が出る。だが、新型コロナ禍に伴い、4月から6月末までを緊急対応期間と定めて、大幅に条件を緩和。解雇等を行わない場合には10分の9(同)を助成するほか、雇用保険被保険者ではないパートやアルバイトも対象とする措置が取られている。上限が1人あたり日額8330円と定められているが、その範囲内であれば支払った休業手当の満額に近いお金が助成される。

「緊急対応措置として申請書類などが簡素化され、通常2カ月かかる労働局の審査が1カ月に短縮されています。本来は休業内容を記した計画届を提出してからの申請が必要ですが、特例として計画届の事後提出も可能。すでに休ませている従業員の休業手当の助成を、あとから申請することもできます」(井戸さん)

 ただし、いずれの給付・助成制度の窓口も混雑必至。前出のうどん店主は「雇用調整助成金の申請だけで4時間待たされ、『待っている間にコロナになっちゃうよ』とゴネる人が多数いた」という。(本誌・西岡千史、池田正史/田茂井治)

週刊朝日  2020年5月8‐15日合併号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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